たとえば「投資元本から3割下がったら売却」など。下がった理由を問わず自動的に売ってしまうことで、ずるずると資産が目減りすることを避けることができます。一方、ロスカットになるまでは投資を続けます。したがって「淡々と投資を続けられる下落率(もしくは損失額)」がロスカットルールを決める基準になります。
投信には自動的にロスカットできる仕組みがありません。どのくらい下がったら売るかは投資家それぞれが決めて、自分で売却取引を行うことになります。正確にいえば、ここにも判断が鈍る属人性は残されていると考えることができます。
不要なリスク市場からはさっさと卒業
資産運用をやめる3つの理由ごとに、それぞれの上手なやめ方(売り方)を整理してみます。
資産が目標の金額に達したら、さっさと売却してリスク市場から卒業しましょう。資産運用は必要だから行うのであって、不要なのにずるずると居座ることができるほど心地よい場所ではありません。卒業すると決めてしまえば、時間分散も関係ありません。そもそも金融機関が勧める売却時の時間分散という考え方は、お客さまである投資家を少しでもリスク市場に留めておくための理屈という側面もあるようです。
想定外のお金が急に必要になったときも同様です。必要な金額分を素早く売却して「いまここにある危機」を乗り越えましょう。資産運用は将来の不安を解消する対策のひとつですが、いまここにある危機を脱しなければ将来そのものを見ることはできません。
売却して現金化したら銀行に預けるのが一般的。その際はペイオフ対策として1000万円以下に分けて、預ける銀行を分散させておきましょう。
再考する期間を決めて必ず守る
問題は、ゴールの時期が来たのに資産金額が目標に届いていない場合です。それぞれのリスク志向や不足金額によっても違ってきますが、迷った場合は以下の2点を基本に再考してみてはどうでしょうか。
1点めは、リスク市場への再入場はできないと考えること。ここですべての資産を現金化して資産運用をやめてしまっても、タイミングを見て投資をリスタートさせることは可能です。しかし、複利効果はいったん振り出しに戻るし、そこからの長期投資は事実上難しくなります。リターンマッチはない。それを基本に売却するかどうかを検討しましょう。
2点めは、再考する期間を決めて必ず守ることです。迷い悩んでいる間も資産はリスクにさらされ、価値は変動します。やや乱暴ですが、売却するにせよ投資を続けるにせよ、資産の使いみち・使い方を早く確認して、ライフプランを立て直すなどの具体的な対策を考えた方が得策です。
私たちは、過去に囚われ未来に怯えて生きています。その呪縛から少しでも解放されたくて、長期にわたって面倒な資産運用を行うわけです。その結果(投資損益)は事実として受け止めるしかなさそうです。これまで同様、またはこれまで以上に人生を楽しむために、いますべきことは何なのか。投資成果はどうあれ、いつもそれを忘れずに暮らしていきたいものです。