3つめの想定外のお金が急に必要になったとき。具体的には事故や健康上の理由などでしょうか。自分だけでなく、子どもや孫が対象の場合もあるでしょう。必要な金額によっては、資産の全額を売却して現金化しなければならないケースもあり得るでしょう。

売却も時間分散でリスクコントロール

 あまり語られてはいないものの、資産の売却について金融機関が勧めるセオリーのようなものがあります。積み立て投資と同じように、時間を分散して売却を進める方法です。換金時期を複数回に分散してずらすことで、市場タイミングによる価格変動リスクを抑えることが期待できるからです。

 例えば以下のような方法があります。(1)定期的に同じ口数を売却(口数売却)。これは比較的単純でわかりやすい売却方法です。(2)定期的に一定額を売却(定額売却)する。積み立て投資の逆ですね。(3)定期的に、残高に一定割合を掛けた額を売却(定率売却)する。いずれの方法も、口数、金額、割合を基準に時間をずらして少しずつ売却していきます。

 これらの方法は確かに合理的で一理あります。ゴールとなる年齢に近づき、それにともなって目標金額にもメドが立った場合は、この考え方は理解できます。しかし、ゴール年齢になったものの金額が足りなかったらどうでしょう。例えば、あと3年で資産運用をやめる予定の年齢になるけど、目標金額に2割足りない場合。今後3年で何とか残り2割を達成したいと考える人がいることも事実ではないでしょうか。

ロスカットルールを自分で事前に決める

 3年で20%の収益を単純平均で年率7%のリターンとすると、リスク度合いでいえば、個別株式や株式投信などに相当します。しかも、資産の一部ではなく全体としてのリスク度合いですから、60歳前後の人が取るリスクとしては大き過ぎます。合理的とはいえません。

 購入よりも売却が難しいといわれる本質は、まさにこの部分です。残された時間は少ないのに何とか利益を増やしたい、最近好調なのでもっと長く持っていればもっと増えるかも――。資産運用は合理性をもって臨むと成功の確率が上がりますが、人間の頭や行動は合理的にはできていないのです。

 資産の売却において心の迷いや欲のような属人性をできる限り排除するためには、事前に仕組みやルールを設定しておくことが有効といわれています。代表的なのは「ロスカットルール」。「ここまで下がったら有無を言わさず売却する」という下落率もしくは損失額を事前に決めておき、淡々と実行するものです。