長期の資産形成に不向きな理由
毎月分配型が長期の資産形成に不向きな理由を、改めて整理してみましょう。金融庁や識者が主に指摘するのは「複利効果が期待しづらい」という点です。
複利効果とは、運用で得た利益(価額上昇分や利子所得)を資産として再投資することで、いわば利息が利息を生んで資産が膨らんでいく効果のこと。ちなみに、単利とは投資元本だけに利子がつくこと。複利は投資元本と以前に得た利子を合わせた金額に対して利子がつくことです。
投信の分配は決算を行って初めて利益を投資家に戻します。したがって毎月分配型は基本的に単利の運用になります。一方、通常の年1回分配は毎月の運用益を再投資するので、複利の運用が期待できます。投信の決算は年1回以上と決められていますが、分配金を必ず出さなければならないという法的定めはありません(目論見書に明記している場合は別)。
複利の「72の法則」と単利の「100の法則」
たとえば100万円を年率5%で運用した場合、2年後の単利による投資成果は投資元本100万円+1年目の収益5万円+2年目の収益5万円で110万円になります。一方、複利による投資成果は投資元本100万円+1年目の収益5万円+2年目の収益(105万円×5%=5万2500円)で110万2500円となるわけです。
たかが2500円とあなどるなかれ。これが10年、20年、30年となると想像以上に大きな差となって投資成果に表れます。複利には「72の法則」があります。これは「(72÷複利の金利)の計算結果が、資産が2倍になる期間(近似値)」というもの。5%複利で運用すれば72÷5となり、14.4年で資産が2倍になる計算です。
単利は「100の法則」です。これは「(100÷単利の金利)の計算結果が、資産が2倍になる期間(近似値)」というものです。上記同様、5%単利で運用すると100÷5となり、20年で2倍になります。
複利なら資産が2倍になるのに14.4年かかりますが、単利なら20年かかります。その差は5.4年。さらに、複利なら資産が3倍になるのにかかる期間は23年です。20年という期間で考えれば、単利運用で資産は2倍になりますが、複利運用なら3倍近くまで成長することが期待できるわけです。複利効果の大きさがイメージできたのではないでしょうか。