本報告書ではこれらの調査結果を踏まえながら、高齢社会における資産の形成・管理での心構えを「現役期」「リタイヤ期前後」「高齢期」に分けて提案しています。

 現役期は「長寿化に対応し、長期・積立・分散投資など少額からでも資産形成の行動を起こす時期」、リタイヤ期前後は「リタイヤ期以降の人生も長期化していることに対応し、金融資産の目減りの防止や計画的な資産の取崩しに向けて行動する時期」、高齢期は「資産の計画的な取崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期」と定義しています。

 たとえば、現役期の具体的な対応策として以下の4点を挙げています。(1)早い時期から資産形成の有効性を認識する、(2)少額からであっても安定的に資産形成をおこなう、(3)自らにふさわしいライフプラン・マネープランを検討する、(4)長期的に取引できる金融サービス提供者を選ぶ――。それぞれに具体的な説明がついており、なかなか踏み込んだ内容となっています。

長期投資のメリットを信じられるか

 筆者が本報告書を読んで改めて感じたのは「長期投資」の意味です。

「長期・積立・分散投資をできる限り早めに始めて『時間』を味方にした資産形成をおこなうことが、特に有効に作用するものと考えられる」(現役期)。

「高齢社会では、リタイヤ後もまだ20~30年の人生が続くことを前提に、中長期的な資産運用(長期・積立・分散投資など)の継続・実行とその後の計画的な取崩しの実行が挙げられる」(リタイヤ期前後)。

 平均寿命が伸びて、老後生活の期間が以前より長くなりました。それに伴い準備したい資金も増えることになります。一方で、投資期間を以前より長くすることも可能になったわけで、まさに「時間を上手に活用して資金寿命を伸ばす」ことがより大事になっています。

 一般にいわれる長期投資のメリットは、(1)投資期間が長くなるほど、収益のブレが小さくなり安定する、(2)収益を再投資していくことで複利効果が得られ、さらなる収益拡大が期待できる、あたりでしょうか。投資対象を分散させながら積み立てで長期投資して収益を待つのが、個人の資産運用の基本です。しかしながら、その長期投資の効果を本当に信じている人はどのくらいいるでしょうか。

株価はなぜ長期的に上がるのか

 資産運用は結果、つまり残した金額がすべてです。積立・分散投資を30年間おこなったとして、安定していたとしてもその結果が損益プラスマイナスゼロ付近では意味がありません。複利効果が期待できるといっても、最終損益がマイナスだったら複利も何もないのです。