一方、日本IBMで戦略コンサルティングやデザイン統括を行う池田氏は「テクノロジーを使って社会を良い方向に向けていくにはどうしたら良いのか、そのために企業はインパクトの大きいテクノロジーをどう活用していけば良いのかを考え、日々企業のコンサルティングを行っている」と別の視点からのアプローチを語った。最近は先端テクノロジーがもたらすインパクトの大きさをよく理解し、積極的に活用する機会だと認識している経営トップが多く、これを使い新事業の創出を試みる企業も多いという。
また、池田氏は「テクノロジーが実現する未来」のビジョンとして『攻殻機動隊』というSF漫画作品を例に挙げたが、今やこうしたSFの世界が夢物語ではなく、「現実と地続き」の世界に思えるほどにテクノロジーが進化してきている。伊藤氏はこうした話題を受けて、テクノロジーの活用先についての具体的なビジョンを持つことの重要性を説いた。
「恐らくそういうこと(SF映画等)に対する興味関心をどれだけ持っているか、ということも大事なんでしょうね。技術ドリブンも時には必要だけど、『こういう世界を実現したいんだ』という明確なイメージがあれば、じゃあそれを技術的に実現するにはどういう風にすれば良いんだろう、と考えていくことができますよね。日本の経営者やリーダーと話していると、このビジョンの部分がちょっと弱い気がしています」
セッションでは「日本には尖ったパッションを持ったリーダーが少ない」ことについて意見が交わされる場面もあったが、このことと無関係ではないのかもしれない。そして玉川氏は、ビジョンを持つことに加えて歴史を知ることも必要だと語る。
「歴史に学ぶ、という言い方もありますが、リベラル・アーツや孫子のような『こういうことが起こった時、人間はこうなる』という指針となる歴史を学ぶことはすごく大事だと思います。その上で、例えば『レディ・プレイヤー1』のような最近のSF映画や、クラウドやIoTといった今の技術の両方を見ていくと、この先どういったものが成長していくのかという予想がつけられるんですよ。今はまだ小さいかもしれないけど、今後成長していくであろう領域を正確に把握していくには、歴史と今描かれているITの未来、その両方を知っておく必要があると思います」
急速に進化するテクノロジーを上手くビジネスに取り入れるには、歴史に学びつつ現在のテクノロジーで「何ができるのか」を把握し、将来「どんな世界を作りたいのか」のビジョンを持つ必要があるようだ。