日本企業がテクノロジーを使って世界で勝つために

 IBMは量子コンピューター、ヤフーはスーパーコンピュータ「kukai」の開発を行うなど、次世代テクノロジーの活用やR&D連携にも積極的だ。二社の池田氏、伊藤氏ともその本質的な価値を見定め、新たなビジネスを創出するための準備を進めていると話す。

 玉川氏は大企業とスタートアップ、それぞれが協力してR&Dに取り組むことの有用性を説いた。

「一般論ですが、次世代の研究って結果が出るスパンが長ければ長いほど、体力がある方が強いんですね。つまり、スタートアップは基本勝てないんです。ですが、たまにAmazonやGoogle、Facebook、Microsoftに勝つ企業が表れる。これは大企業が目を向けない領域を攻めているからなんです」

 既存事業で数千億の売上のある大企業は、あえて利益率の低いニッチな領域には手を出しづらい。こだわりとセンスを持って大企業が入り込めない領域を見付けだし、飛び込んでいけるのはスタートアップの強みだ。玉川氏はR&D連携に関して、大企業側はこうしたスタートアップのニッチな戦略やビジョンを見て、良いと思ったら後押しする。そして、スタートアップ側は責任を持って自分達が勝てる領域をかぎ分け、成すべきことを成すという連携の仕方がベストなのではと語った。

 最後にモデレーターの谷中氏は「日本企業が世界で活躍するには」というテーマで3名それぞれの視点から一言ずつメッセージを求めた。

 伊藤氏は改めて「技術で何ができるのか」をしっかり把握することと、同時に「何をやるのか」というビジョンを明確にすることの重要性を強調した。

 玉川氏は、就社主義から就職主義へと変わろうとする日本において、「リスクを取れること」は個人の価値だと語る。起業家には積極的にリスクを取ることを、大企業にはリスクを取っている人を応援してあげて欲しいというメッセージを残した。

 池田氏はかつての日本企業には試行錯誤を繰り返すことのできる環境が存在していたことや、そうした環境を再び取り戻したいという考えを語った。さらにGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)への対抗策として、彼らが形成するプラットフォームを利用し、より価値の高い体験を提供していくといった戦略を提案。日本企業への期待を語った。

 ビッグデータやAIを中心に、あらゆる業界で取り入れられつつある先端テクノロジー。企業として成長し続けていくためには、無関心ではいられない分野だ。