これを踏襲したのが、台湾の「人間の鎖」である。ちょうど私が台湾に駐在した2004年2月28日午後2時28分に、北の基隆から南の高雄まで、民進党支持者が一斉に手をつないだのである。台北市内でこの228事件を念頭に置いたイベントを目撃したが、手をつながれると通れない所は、手を放して通してくれて、2時28分きっかりに手をつなぎなおすという、おおらかなものであった。
最初にタリンの首相府を訪問したときには、壁には銃弾の跡が無数につき、地面にはサンドバッグが敷き詰められ、物々しい雰囲気であった。2016(平成28)年4月、当時36歳のエストニア首相、ロイヴィス氏が来日したとき、その話をしたところ、おそらく1990年当時10歳くらいであった彼は、自分の執務場所がそのような状況であったとは知らなかったと言っていた。
27年前に訪れた首相府(Stenbocki Maja)は、今では立派に修復されていた。
日本の“先輩”となり得るエストニア
そのエストニアが電子政府(e-Government)として世界をリードしている。電子居住権のIDカードに登録すれば、選挙の投票さえもそれを使ってできてしまう。会社設立もできる。
そこまで進んだのは、ひとつには、タリン市内にあった旧ソ連の人工知能センターのおかげということである。他に資源もない小国なので、そこに投資をし、かつ、法律も一から作り直すに当たり、テクノロジーを最適に活用できる工夫をした。
さらには教育改革により、暗記一辺倒から課題解決型の教育を施した。その結果、スカイプ(Skype)やトランスファーワイズ(TransferWise)といった世界的なベンチャーが生まれたのである。
日本においても、ベンチャーエコシステムの下地となる教育の根本的改革が必要であることは、事あるごとに訴えているが、エストニアが良き先輩となろう。