日本政府、北朝鮮への制裁強化を決定

北朝鮮、「ミサイル」発射
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4月上旬は、ロンドンで開催された第2回G20金融サミット(2日)、麻生太郎政権の大規模な財政出動を伴う「経済危機対策」決定(10日)など、日本の将来を決定づけるかもしれない出来事が国内外で幾つか起こった。その中で今回は、5日に北朝鮮が実施した弾道ミサイルと見られる「発射実験」を取り上げたい。

 ミサイル発射を受け、日本は北朝鮮に対する新たな国連安保理決議の採択を目指した。当初これを支持していた米国が、決議採択に慎重な中国とロシアに折れて妥協し、結局は法的拘束力なき「議長声明」という形で落ち着いた。一方、北朝鮮は核問題をめぐる6カ国協議からの離脱を宣言。昨年12月の協議決裂に続き、北朝鮮情勢は一段と混迷が深まりそうだ。

 日本の安全保障を脅かす挑発行為なのに、政治やマスコミの反応には首を傾げざるを得ない。麻生政権は迎撃ミサイルの配備など万全の態勢を積極的にアピールしたが、支持率アップを狙ったパフォーマンスではないか。そういう疑念を招いた。

【図解】北朝鮮の長距離弾道ミサイル開発

ミサイル開発進行中
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 マスコミや野党は、4月4日の「誤探知」に基づく政府発表を厳しく批判した。前回、前々回のテポドン発射時における対応の遅れへの反省から、今回は迅速な通知を最優先にしたのだから、4日のミスには仕方ない面もある。それで国民に大きな損害が生じたわけでもないのに、異様とも思える執拗さだった。

 総選挙を控え、今回の事態は外交・安保政策の在り方について、議論を深める好機になると考えられていた。しかし、この分野では与野党とも内部対立をはらんでいる上、「外交・安保は票にならない」と諦めているのか、盛り上がる気配はない。

 5カ月以内に行われる総選挙ではさほど影響しなくとも、北朝鮮の動向は長期にわたり、日本の安全を脅かしかねないのだから、真剣な国民的議論が必要だ。こうした深刻な事態に、日本はどのように対応していくべきなのか。

20年代に酷似、日本の周辺情勢

 覇権国家であるA国との同盟を基盤に、日本は安定と繁栄を謳歌してきた。ところが、A国の国力は徐々に低下する。同時に、同盟関係に基づくA国からの要請に対し、日本は様々な理由をつけて積極的に応じない。このため、両国関係は必ずしも盤石とは言えなくなっている。

 こうした中、台頭してきたB国は日本とA国の同盟関係を嫌い、両国の離反を図る。そして、東アジア地域の不安定要因であるC国をめぐる安全保障問題について、B国は日本やA国を含む関係国による多国間協議の議長役を買って出た。さらには、アジア太平洋地域をカバーする、多国間の安全保障枠組みをつくることが望ましいと主張している。

 A国は日本との同盟関係継続を希望するものの、他方で外交・経済で依存を強めているB国の意向も無視するわけにはいかない。

 当コラムでは、厳しさを増す内外情勢に日本がどう立ち向かうべきかを考えるに当たり、歴史とりわけ現代日本人があまり教わっていない日本の近代史が、貴重な教訓を示していると繰り返し主張してきた。

 先ほど太字にした箇所では、あえて日本以外に登場する3つの国名を伏せておいた。A=米国、B=中国、C=北朝鮮を当てはめれば当然、現在の日本を取り巻く国際情勢を論じているように思うはずだ。