4月21日は、政策金利引き下げのニュースが、カナダ、スウェーデン、インドから飛び込んできた。

 カナダの利下げは予想外だった。市場は、カナダ銀行は政策金利である翌日物金利誘導水準を年0.5%に据え置いた上で、23日に発表される金融政策報告で非伝統的手段の導入について発表してくる流れだとみていた。だが、実際にカナダ銀行が選択したのは、0.25%追加利下げと、時期を明示した「時間軸」の付加だった。

 翌日物金利誘導水準は、今回の決定で0.25%さらに引き下げられて、年0.25%になった(2007年12月以降の利下げ幅は累計4.25%)。カナダ銀行はこの水準を「ELB(the effective lower bound);事実上の下限」とした。

 理由は、「低金利環境で市場機能を維持するため」。市場機能にこだわり続けてきた白川方明日銀総裁にとってみれば、援軍がまた増えた形である(後述するスウェーデンも含め、ストレートにゼロ金利にすることの弊害を意識した米欧各国中銀の動きも1つの理由となり、日銀の利下げは年0.1%までで打ち止めだと筆者はみている)。

 日銀や欧州中央銀行(ECB)と同じように、カナダも上限政策金利と下限政策金利によって翌日物金利の変動幅を一定の範囲内におさめる「コリドー」(カナダ銀行は発表資料で「オペレーティングバンド(operating band)」と呼んでいる)を設定している。その幅は、今回の措置で従来の半分に縮小した。

 具体的には、「コリドー」の上限であるバンクレートが年0.5%へと0.25%引き下げられる一方で、下限である中銀への預金レートは年0.25%のまま据え置かれ、翌日物金利誘導水準と並ぶことになった(日銀の現在の政策金利体系で超過準備付利金利と翌日物金利誘導水準がともに年0.1%になっていることと似通った状況)。従来は政策金利体系の中心点になっていた翌日物金利誘導水準は、今後は下限ということになった。

 さらに、カナダ銀行は「時間軸」を打ち出した。政策金利が低い水準になってしまったので、より長い期間の金利に影響を及ぼすため、今後は将来の金融政策のパスに関する、より明示的な「ガイダンス」を示すことが適切だとした上で、カナダ銀行は、「インフレ見通し次第で変わり得るという条件付きだが、翌日物誘導水準は『2010年第2四半期の終わりまで』、現在の水準にとどまると予想され得る」とした。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)が声明文に現在付加している、「より長い期間(for an extended period)」という、定性的表現のみによる時間軸よりも一歩進んだ、時期をはっきり示した「時間軸」であるという点で、新味がある。

 このほか、声明文でカナダ銀行が示した経済見通しは、非常に厳しいものである。特に注目すべきは、想定される景気回復および物価上昇のパスが、きわめて緩やかなものであるということ。カナダが陥ったリセッションは想定されていたよりも深いものだとした上で、景気回復が始まる時期は今年の第4四半期にずれ込んだと、中銀は経済情勢を評価。