金利上昇でプライマリーバランスの黒字化がより重要な局面に

【経済政策シナリオ】
<骨太方針は岸田政権が取りまとめへ>

 例年6月に、政府は「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる骨太方針を取りまとめる。年末に策定する来年度の本予算や税制改正に向けた議論の土台となるほか、中長期的な政策方針も盛り込まれる。

 上述の通り、早期の衆院解散があるとしても、通常国会会期末のタイミングが見込まれるため、岸田政権が骨太方針を取りまとめることになりそうだ。

 今回の骨太方針は例年にも増して注目される。特に、2025年度にプライマリーバランス黒字化の財政健全化目標の期限を迎えるため、その扱いをどうするかは大きな論点だ。

 物価上昇が定着し、金融政策運営の正常化に伴って金利が上昇しやすい局面を迎える中では、日本財政の持続可能性を担保する上で、プライマリーバランスの黒字化がこれまで以上に重要視される。

 早期の衆院解散を選択するにせよ、見送って総裁公選に臨むにせよ、岸田首相は基本的にプライマリーバランスの黒字化目標を堅持するだろう。

 今年1月時点の内閣府による「中長期の経済財政に関する試算」では、一定の歳出効率化努力により2025年度に黒字化し、2026年度以降に黒字幅拡大との見通しが示されている。

 財政健全化目標として、例えば一定の歳出効率化努力の遂行による2025年度黒字化目標の堅持、かつ2026年度以降の黒字維持の目標が打ち出されるのではないか。早期解散の場合に岸田首相が財政拡張路線に転じる可能性もあるが、現時点では低いと予想する。

<政治情勢次第で経済政策の方向性は変わり得る>
 今年6月の骨太方針取りまとめまでは、岸田政権が経済政策を決める。だが、その後の経済政策は政治情勢次第であろう。

 メインシナリオのように、総裁公選で選出された新・総理総裁の主導により衆院解散・総選挙が実施される場合、自民党が勝利を収めれば、新首相が経済政策の方向性を決める。一方、自民党が敗北すれば、連立政権の組み合わせ次第で経済政策の方向性が決まる。

 リスクシナリオのように、岸田首相が早期の解散総選挙に踏み切る場合、仮に勝利すれば現在の政策路線が継続されるが、敗北すれば、やはり連立政権の組み合わせ次第となる。

 各政党の経済政策スタンスは多様で、特に財政、金融政策の方向性が分かれる。2017年の衆院選の頃から、多くの野党が外交・安全保障で現実路線を打ち出す中、経済政策で与党や他の野党との差別化を図ろうとしたためと考えられる。

 また、自民党有力政治家の経済政策スタンスも多様だ。自民党は、元々政策の異なる派閥の集合体であったため、多様なスタンスが許容されている。すなわち、政権交代や連立政権組み替えの際には当然だが、自民党内での首相交代であっても経済政策の方向性が変わり得る。