ヤンキーインターンの源流

 勝山も話しているが、訪問販売とは、突き詰めれば確率である。あきらめずに回れば、いつか商品にマッチする客に行き当たる。その1回を逃さないようにトークの質を磨く。これが鉄則である。

 ただ、問題はいつそのお客に行き当たるのかがわからないこと。100軒回れば一人はいると思って回れるか、それとも99軒を回る中で心が折れてしまうか。勝山は、最初の1軒で契約が取れたので、素直に信じてピンポンを繰り返すことができた。

 その後はもうイケイケ。朝から晩まで、1日400軒くらい訪問して契約を取りまくった。月に20本も契約を取れば評価されるところ、その倍以上の49件の契約を最初の1カ月で取ったというからすさまじい。結果、一次代理店グループの営業成績で全国1位になった。

 営業の仕事を始めた勝山は、深夜の暴走やクラブ通いは全くしなくなった。やればやるほど結果が出る営業の仕事にのめり込み、そんなことをしているヒマがなくなったのだろう。

 そんな勝山の“確変”を見て、久世があるアイデアを思いつく。勝山のように、夢も希望もなくぶらぶらしているヤンキーは日本中にいる。そんな彼らに勝山のような機会を提供できれば、人生を変えることができるのではないか。そう考えたのだ。

 勝山自身がそうだが、悪さをする若者が根っからの悪党かというと、必ずしもそうではない。心の中に寂しさを抱えており、そのストレスを発散する場所がないために悪いことをしたり、群れて騒いだりしているのが実態だろう。ならば、彼らを正しい場所に置き、行くべき方向を示せばいい。

 そうして始めたのが、後に株式会社ハッシャダイの主力サービスとなる「ヤンキーインターン」である。

 ヤンキーインターンとは、中卒や高卒のヤンキーを東京に呼び寄せ、シェアハウスで半年間の共同生活を送りながら、社会人としての基本や営業などを教えるというサービス。始めた当初は営業研修とエンジニア育成の二本立てだったが、その後はデータサイエンティストや経営企画などのコースを設立。その規模を広げていった。

 2015年11月にサービスを始めて以降、インターンに参加した若者は600人ほど。支援の手が届きにくい非大卒の若者に対する実践的な支援として、メディアなどでも大きな注目を集めた。