「全線無料デイ」の浮上

 沿線団体交流会からの提案を受け、近江鉄道株式会社では、各団体が実施しているイベントに近江鉄道を使って回遊してもらう企画とすることで検討が進んだ。加えて、近江鉄道グループが従来から実施してきた「近江鉄道グループありがとうフェスタ」を同時開催とすることが決まった。

「近江鉄道グループありがとうフェスタ」は、コロナ前まで毎年10月頃に、彦根駅近辺を会場として開催されてきたイベントだ。今回もこれを基本として秋の週末、2022年10月16日(日)に開くことが決まった。

 ここで交流会に参加する人々に対する運賃収受の方法が議論になった。

 普通に考えれば、近江鉄道の「お得な切符」である全線乗り放題パス「1デイスマイルチケット」(金土日・祝日利用可能、大人900円、子供450円)の利用が想定される。だが、無人駅でのチケットの購入は降車時に乗務員からとなり、100円のお釣りの支払いなどが煩雑になる可能性がある。利用者が集中する時間帯では遅延などの原因にもなる。

 そこで思い切って、この日に限っては全線無料にしよう、という提案が社内で出たようだ。

 もちろん、日曜日の定期外の運輸収入はなくなる。イベントの宣伝広告費もかかる。そのうえで実施する「全線無料デイ」である。

 近年、いくつかの都市で公共交通の無料デイが実施されている。そこでは経済効果を狙ったものなども少なくないが、近江鉄道の場合は、シンプルに沿線の人々に「ありがとう」を伝えることと、諸団体の交流を目的にしたものであった。