遺伝が伝わる組み合わせを考える

 遺伝子は、たくさんの遺伝子が組み合わさって、バラつきを持って伝わるものです。したがって、親がどうであれ、いろいろな子どもが生まれます。

 一家といいますか1組の親に5人や6人、あるいは10人も子供がいるという時代がありました。親に似ているとか似ていないというのは問題ではなく、いろいろな子どもが生まれるのは当たり前のこととして認識されていました。

 今は少子化の時代です。2023年6月に厚労省が発表したデータによれば、2022年の日本の合計特殊出生率は1.26でした。合計特殊出生率とは、1人の女性が、いちおう公的に出産可能とされている目安の年齢である15歳から49歳までに産む子どもの数の平均のことを指します。

 1組の親に対して、昔の人に言わせればたった1人か2人の子どもというサンプルを相手に、類似しているところだけを見るなら、やはり、この親にしてこの子あり、というような話になりがちです。

 しかし、遺伝とは決してそういうものではありません。

 私はよくキャッチフレーズ的に、「遺伝は遺伝しない」ということを言います。その意味は、その人自身の内側に遺伝はあるけれどもそれは必ずしも親と同形というわけではない、ということです。

 しかし、遺伝は親から子どもに伝わるものだというイメージには根強いものがあります。いくら「遺伝は遺伝しない」ということを強調しても、相変わらず、そのイメージは抱かれ続けているようです。

 専門の研究者ではない、一般の人たちが遺伝について抱くイメージや考え方を私は「素朴遺伝観」と呼んでいます。「遺伝とは宿命だ」とする考え方、つまり形質は親から子に伝達され、生まれつきの形質は一生涯、環境をどう変えようとも変わらない、としてしまうのが素朴遺伝観の代表的なものですが、それは決して科学的ではなく、時と場合によって良いようにも悪いようにも解釈されてしまう考え方なのです。

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