4月。学校、会社など「新生活」をスタートさせた人も多いと思います。

「環境さえ変われば自分の人生は好転するはず」——。

 そんな思いを抱いている人も少ないくないでしょう。ただ、残念ながらそうはいかないのです。その理由は「遺伝」。

「遺伝」の影響は、環境に左右されるほど弱くないのです。

 ではどうしたら人生を好転させられるのか。行動遺伝学者である安藤寿康氏が「遺伝」がわれわれの人生に与える影響について解説したコンテンツ(書籍『子どもにとって親ガチャとは』(シンクロナス新書))より「環境と遺伝」の関係を全三回でご紹介します。(第一回)

環境のせいにするのは逃げである

 見たくないネガティブな面があるとしても、遺伝がある、ということは認めた方がいいと思います。

 環境の影響を絶対として見る環境主義は、環境さえ変わっていれば自分はこうはならずに済んだのだ、と考え、そのようにメッセージします。一方、環境を変えても自分は変わらない、とメッセージされる場合、そこには必ず、遺伝という考え方があります。

 今のこの状態は私にとっては実は嘘だ、と考えているとしましょう。
環境主義とは、環境さえ変えれば今の状況を根本から変えられるのだ、という考えから来ています。それは「より良くなろう」という向上心を支えるものとも言えますが、いつでもそこから逃げようとする姿勢を持っている、ということでもあります。環境主義のその姿勢が向上心、つまり本当の意味で今の問題を解決するいい方向に向いてれば、問題はないでしょう。

 逃げるということにも可能性があります。現状の中で立ち回ってそこから出ていこうというのは、ポジティブな力であると言うこともできて、逃げではなくて攻め、と見ることもできます。

 ただし、環境のせいにすると、別の環境へ、そのまた別の環境へということになりがちです。いまの自分を否定することにつながり、いまの自分のままで満ち足りていると思わせてもらえません。これは、自分をそういう風にさせた第三者がいて、その人が悪いのだという、すべて人のせいにする、他虐的な発想に立つということでもあります。