英国のスナク首相と米国のバイデン大統領(Martyn Wheatley/Parsons Media via ZUMA Press/共同通信イメージズ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

「ファイブ・アイズ」の英米共同作戦

[ロンドン発]英米両政府は3月25日、中国が政治家、ジャーナリスト、学者、何百万人もの有権者の個人情報を標的に大規模な世界的サイバー攻撃を仕掛けていると制裁を発動した。アングロサクソン系電子スパイ同盟「ファイブ・アイズ」の主軸である英米の共同作戦だ。

 オリバー・ダウデン英副首相の発表によると、英政府通信本部(GCHQ)内の国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は、英国選挙管理委員会のシステムが2021~22年に中国の国家関連組織によって攻撃された可能性が高いことを突き止めた。

 また、中国国家関連の高度標的型脅威グループ31(APT31)が21年に英議会議員に対し偵察活動を行ったことがほぼ確実だという。標的となった人物の大半は中国の悪質な活動を指摘する著名な人物だったが、アカウントの侵害に成功したケースはなかった。

 英外務省は駐英中国大使を召喚し、APT31のメンバーであるフロント企業と個人2人に制裁を科した。首相時代「英米黄金時代」を唱えたデービッド・キャメロン英外相は「中国国家関連の組織や個人が英国の民主的な制度や政治プロセスを標的にしたことは容認できない」と指弾した。