ヨハネスブルクのある教会前で出会った無邪気な子供たち(写真:橋本 昇)
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(フォトグラファー:橋本 昇)

アパルトヘイト廃止がもたらした混沌

 ヨハネスブルクの空港から市街地までは高速道路が整備され、近代的なビルが建ち並ぶ町へと車は進んで行った。成田空港からマレーシアのクアラルンプールを経由、さらにインド洋を延々と飛んでヨハネスブルクへ着いた。アフリカ大陸は北回り、南回りいずれで飛んでも果ての果てというのが実感だ。

 南アフリカに根付いた白人たちが豊かな暮らしを享受している国だとは聞いていた。が、まったくアフリカの香りがしない。さらにヨハネスブルクはスマートシティとしての歩みも進んでいた。

 モバイル端末を借りるとニュースがリアルタイムで流れてくる。30年前の当時、まだスマホもなくまったくのアナログ生活をしていた私はまた驚いた。

 しかし、こうしてアフリカで随一のビジネス拠点として発展してきたヨハネスブルクだが、今やなんとも恐ろし気な町になっていた。ふと気が付くと棍棒を持った男が通りの向こうからこちらをうかがっている。カメラを持った私は思わず身構えた。何をするでもなく壁にもたれている男たちがこちらに鋭い視線を向けていた。

 アパルトヘイトの廃止が治安の悪化を招いたのは否定できない。それまで有色人種として居住区に閉じ込められていた人々がアパルトヘイト廃止によって一気に都市部に流れ込んで来たのだ。

 そして当然だが、彼らがすぐに職を得られるはずもない。だから彼らの一部は、強盗、略奪、殺人、麻薬組織、と犯罪に手を染めていった。