AM局全体の売上高、およそ四半世紀で6割減

 日本のAMラジオ放送事業者には、テレビとラジオの兼営が32社、ラジオのみの単営が15社あります。日本民間放送連盟(民放連)の資料によると、AM局全体の売上高は過去最大だった1991年の2040億円をピークに下がり続けています。2017年には797億円にまで減少。およそ四半世紀で6割減という凄まじさでした。

(写真:shironagasukujira/イメージマート)

 一方、ラジオ放送は放送法に定めのある「基幹放送」であり、免許事業です。公共の電波を使って災害時などには重要な情報を流す公的な存在ですから、経営が苦しいからといって、おいそれと放送事業を中止するわけにもいきません。

 総務省もラジオ放送網の寸断を容認することはできません。そのため、民放連と総務省はAM放送から撤退しても聴取者に不利益を与えない方法を検討してきました。その結論が高コストのAM放送を見限り、比較的安価なFM放送に切り替えていくというものです。

 住民に不利益を与えない根拠としては、2014年から本格的に始まっている「ワイドFM」(FM補完放送)の存在があります。

 ワイドFMは都市部や山間部におけるAM放送の難聴対策として始まったもので、AMのカバーエリアに新たなFMの周波数を割り当て、AM放送と同じ番組をFMでも流す試みです。AM事業者のほとんどはこのワイドFMを実施しています。

 2015年以降に製造・販売されたラジオの大半は「ワイドFM対応」とされており、仮にAM放送が止まっても同じ内容を聴取することが可能です。今回の一斉休止では、ワイドFM視聴がスムーズに行われるか、聴取可能なラジオがどこまで行き渡っているかを調べることも目的です。

 災害用として販売されているラジオにはAMしか聴取できない製品もありますから、調査は慎重に行われることになります。

 なお、一連のFM転換にNHKは含まれていません。