現在放送中の日曜劇場『下剋上球児』現在放送中の日曜劇場『下剋上球児』(番組公式ホームページより)

 日本最古のドラマ枠は1956年に始まったTBS『日曜劇場』(日曜午後9時)である。67年も続いているのは強いドラマ枠だからだ。この夏も堺雅人が主演した『VIVANT』がドラマ界の話題を独占した。目下のところ、最強のドラマ枠と言っていい。どうして強いのか。その理由を解き明かしたい。

制作を任されるのはエース級のみ

 まず作り手に力がある。「ドラマのTBS」だけに、そもそも同局のドラマ制作者は実力者ぞろいなのだが、その中でも『日曜劇場』を担当できるのはエース級に限られる。

『日曜劇場』は2020年代に入ってから今年9月末までに14本の作品を放送したが、そのうち3本を『VIVANT』の福澤克雄監督が撮っている。1本を制作するには準備期間を含めて1年以上かかるので、これが限界だろう。選りすぐりの制作者しかつくれないから、1人当たりの担当作品が多くなる。

 福澤氏は1989年に入社し、賀来千香子が主演した『誰にも言えない』(1993年)で監督デビューした。入社4年での監督昇格は他局よりやや遅い。その後、浅野ゆう子が主演した『長男の嫁』(1994年)などのヒット作を撮ったものの、初めての『日曜劇場』は中居正広主演の『白い影』(2001年)だった。入社から12年もかかった。

『日曜劇場』は制作費も特別。プライム帯(午後7時~同11時)の1時間ドラマの制作費は平均3000万円程度で、ネット局が5局しかないテレビ東京はそれより2、3割安いが、『日曜劇場』は基本が約4000万円。突出している。