(写真:AP/アフロ)

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、米アマゾン・ドット・コムの幹部らは、彼らが「第4の柱(fourth pillar)」と呼ぶもの、つまり、次の大ヒット事業を何年もの間、模索し続けているという。

アマゾンが成功させた「3本の柱」

 アマゾンはこれまで、さまざまな業界での新規事業に数十億ドル(数千億円)を投じ、そのたびに投資家の関心を集めてきた。この何年もの間、アマゾンが新分野に参入するというニュースが流れると、同社株は上昇し、競合企業の株価は下落した。こうして同社は大きな話題を生み出し、市場に大きな反応を引き起こす。これを「アマゾン・エフェクト」と呼ぶと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 しかし、アマゾンは、これまで成功してきた「3本の柱」に続く、第4の柱を実現できていない状況だという。医療サービスや実店舗、エンターテインメント、ハードウエアは、同社が近年取り組んできた分野だが、今のところ、活気に満ちた収益性の高い事業にはなっていないと同紙は報じている。

 同紙によると、アマゾンがこれまで成功させてきた3つの柱とは、(1)「電子商取引(外部出品者が販売するマーケットプレースを含む)」、(2)「 Prime(プライム)会員プログラム(サブスクリプションサービス)」、(3)「クラウドコンピューティング(Amazon Web Services、AWS)」だという。

 これらに関連する2023年4~6月期の事業別売上高を見ると、直営のネット通販事業は約530億ドル(約7兆8300億円)だった。また、外部出品者向けサービス(物流サービスを含む)は約323億ドル(約4兆7700億円)、サブスクリプション収入は約99億ドル(約1兆4600億円)だ。

 クラウド事業のAWSは約221億ドル(約3兆2700億円)だった(ドイツStatistaのインフォグラフィックス)。これら事業の売上高合計は約1173億ドル(約17兆3300億円)で、同社全売上高のほぼ9割を占める。

実店舗事業は依然小規模

 電子商取引とクラウド事業で成功を収めたアマゾンだが、同社はまだ他の分野で同様の成果を出せていないとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 例えば、実店舗事業はいまだ規模が小さい。英フィナンシャル・タイムズによれば、傘下のスーパーマーケットチェーン「Whole Foods Market(ホールフーズ・マ ーケット)」はアマゾンが17年に137億ドル(約2兆円)で買収して以降、1兆6000億ドル(約236兆円)規模といわれる米食品・日用品市場で当時恐れられていたような変化を起こすには至っていない。