遊説するバイデン大統領(写真:AP/アフロ)
  • 2024年に実施される米大統領選では、80歳のバイデン大統領と76歳のトランプ前大統領の戦いになる可能性も十分にある。
  • 米国社会を様々な形で引き裂いている分断・分裂を背景に、両者で討論会ではこれまで以上の罵詈雑言が飛び交う恐れも。
  • 米国の政党政治はある意味で緩く、行政や司法も政党化しているため、すべてをかけた熾烈な戦いになりやすい。

(山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)

 これまでにない醜悪な非難の応酬になるかもしれない。来年に行われることになるかもしれない、80歳の現大統領と起訴された76歳の前大統領のテレビ討論会のことだ。

 2024年に向けた民主党、共和党のそれぞれの大統領候補レースについては、バイデン氏とトランプ氏が、他の候補者を圧倒している。

 バイデン氏の健康問題やトランプ氏の起訴などの不安定要因も大きく、今後の展開について確定的なことは言えないが、現時点での世論調査を見る限り、現前大統領の再対決はあり得るストーリーだ。

 2020年のテレビ討論以上に、非難の応酬となる討論を目にする可能性がある。

2020年に実施された前回の討論会。トランプ氏とバイデン氏による非難の応酬となった(写真:AP/アフロ)

 このような異常事態について知るためには、米国社会の分断に加えて、個人主義的な分裂を生みやすい政党制度について知ることが重要である。

 米国社会は建国時から、白人と黒人奴隷という深刻な差別・分断を抱えていた。

 また、白人の中でも、アイルランドやイタリアなどのカトリック系白人は低い社会的経済的地位にとどまるなど分断があった。そもそも自由主義経済、競争を重視する社会であるので、富裕層と貧困層が分かれる社会構造であった。

 しかし、21世紀に入ってから、違った意味で分断が深刻化している。

 米国社会の分断が新たに進んでいる背景には、以下の3点があると考える。