(英エコノミスト誌 2023年6月10日号)

中国・広州で公邸内の庭園を散歩する習近平・マクロン両氏(4月7日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

中国についての新たな議論では、楽観論と運命論が対立する。

 西側民主主義国の政府の間では、今は中国について残念な明瞭さが訪れた瞬間だ。

 気の滅入るようなコンセンサスは、習近平体制の性質についての無邪気な考えと意図的な自己欺瞞が何年も続いた末に生まれたものだ。

 様変わりしたムード――すぐには消えそうにない憂鬱な気分の共有――が感じられたのは、先日開催されたストックホルム中国フォーラムでのことだった。

 欧米の政府高官、学者、財界人などの集まりで、筆者は2008年から断続的に出席している(中国の外交官や学者が参加するセッションもある)。

ウクライナ戦争が落とす影

 スウェーデン外務省と米国のシンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンドが共催した今年の会合では、ウクライナの戦争が大きな影を落とした。

 戦争の当初は、中国が和平の仲介者にうってつけだとの声が欧州の政治指導者の一部にあったが、そういう楽観論は全く聞かれなかった。

 それどころか会合の参加者からは、中国の外交使節が欧州諸国の政府を訪ね、ウクライナは武器を置いて和睦を請うべきだ、ウラジーミル・プーチンは統治者として自衛に取り組んでいるのだと説いて回っているとの話が聞かれた。

 ある講演者は、中国とロシアの「結託」を西側諸国の政府に対する「電気ショック」だと形容した。

 中国はこの紛争の終盤と戦後の復興過程で一役買うことになると予想されている。

 理由はいくつかあり、特に重要なのはウクライナ政府が習氏の関与を望んでいることだ。

 だが、ストックホルムの会場では、欧州の将来の安全保障構造の設計に中国が手を貸すことに対する恐怖感が共有されていた。

 このような不信感が生まれたのは、ウクライナの戦争は北大西洋条約機構(NATO)という防衛同盟のせいだと中国政府高官が非難したとか、個々の国が国益を価値観抜きにその都度計算することによって安全保障を追求する世界秩序を中国が売り込んでいるなどと聞かされてきたからだ。