ウクライナのゼレンスキー大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

[キーウ発]5月4日未明、ウクライナの首都キーウは空襲警報が出され、上空でボーン、ボーンという爆発音が2回聞こえた。筆者はキーウの宿泊先で眠れぬ夜を過ごした。

 キーウ在住の知人女性によると、ウクライナ軍の防空システムがロシア軍の無人航空機(ドローン)を探知して迎撃し爆破した音だという。ウクライナ軍の反攻が迫っていることを予感させた。

キーウ上空で撃ち落とされたドローンが残した爆煙。最初はロシアの攻撃と発表されたが、後に制御不能になったウクライナのドローンと判明(5月4日夕、キーウ旅客駅で筆者撮影)
空襲警報が鳴り、キーウ旅客駅の地下道に避難する乗客。タタタタタッとドローンを撃墜する音が聞こえた(5月4日夕、筆者撮影)

 一方、ロシア側は3日、ウラジーミル・プーチン大統領を殺害するためドローンでモスクワの大統領公邸に攻撃を仕掛けたとウクライナを非難した。米紙ニューヨーク・タイムズによると3日未明、クレムリン上空で15分間隔で爆発が2回起きたという。ロシア側は電子戦システムでドローン攻撃を阻止したと発表した。

 プーチンにとってウクライナへの新たな無差別攻撃の口実となりうるが、ウクライナに責任をなすりつける偽旗(デッチ上げ)作戦でなければ、キーウと比較してクレムリン上空の防空網がすでに破綻していることを意味する。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「私たちはプーチンやモスクワを攻撃しているのではない」と関与を全面否定した。

 キーウメディア「リアル・キーウ」によると、5月に入って4日時点でキーウへの攻撃は3日目で、これほど密度の高い攻撃は今年初めて。ロシア軍はイラン製ドローン「シャヘド」やミサイルを使ってキーウを攻撃している。ロシア軍のドローンとミサイルはすべてキーウ空域で破壊され、民間人の犠牲者や住宅、インフラへの被害はなかったという。

NATO高官「ロシア軍の犠牲はウクライナ軍の5倍」

 米ホワイトハウスのジョン・カービー国家安全保障会議(NSC)戦略広報調整官は5月1日の記者会見で、過去5カ月の間にウクライナ東部ドネツク州の要衝都市バフムートを中心とした攻防により、ウクライナ国内の前線で2万人以上のロシア兵が死亡し、さらに8万人が負傷したとみられると語った。死者の半数は露民間軍事会社ワグネル・グループの傭兵だ。

 プーチンは第2次世界大戦で旧ソ連がナチスドイツに勝利したことを祝う5月9日の「戦勝記念日」の戦果として、ロシア軍が攻勢を続ける数少ない前線の一つ、バフムートの攻略にこだわっているとされる。しかしカービー氏は「ロシアが東部ドンバスで試みたバフムートを中心とした攻勢は失敗に帰した」と指摘した。