立憲民主党の泉健太代表(写真:つのだよしお/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 統一地方選挙で躍進した日本維新の会。自民党が4勝1敗だった衆参補欠選挙でも、衆院和歌山1区で自民候補との事実上の一騎打ちを制して、唯一の黒星を付けている。

 自治体の首長や地方議員を600人とすることを目標としていたが、公認した599人が当選し、非改選の175人をあわせると774人になった。奈良県知事選挙では自民候補を下して、大阪以外ではじめて公認知事が誕生したことも大きい。

 この結果を受けて、野党第一党の奪取に本腰を入れはじめた、とする報道も散見するようになった。だが、それは間違いだ。

維新はとっくに野党第一党を視野に入れている

 維新は選挙中から野党第一党を目指してあからさまに立憲民主党を追い落としにかかっていた。それは衆院補欠選挙で和歌山1区と並んで公認候補を立て、立民と競合した千葉5区の選挙から知ることができる。

 千葉5区は、自民党の薗浦健太郎前議員が、政治資金パーティーで得た収入を政治資金収支報告書に過少に記載した政治資金規正法違反で略式起訴され、議員辞職した「政治とカネ」の問題に伴うものだった。自民も公募で独自候補を立て、与野党の7人が立候補する乱立となった。それでも報道各社の事前の情勢分析では、自民と立民の事実上の一騎打ちと見られていた。

 そこへ割って入ろうと、維新が擁立したのが、28歳の岸野智康候補だった。「政治とカネ」の問題や政策で自民党を批判するのは当然としても、街頭演説であからさまに立憲民主党を名指しして批判していたのだ。国会での放送法をめぐる追及、安全保障への取り組み、憲法審査会の「サル発言」などなど。市川市内の巨大ショッピングモールの昼時。幼い子どもを連れた母親も目立つ中で、選挙カーの上に立ち、マイクを通じて、政策より立民の政治姿勢を批難する。演説にも力がこもり、その勢いは罵倒にすら聞こえるほどだ。