モンテネグロで逮捕され後ろ手に手錠をはめられたクォン・ドヒョン容疑者(2023年3月24日、写真:ロイター/アフロ)

 2022年5月、仮想通貨(暗号資産)のテラ・ルナ大暴落事件をご存じだろう。

 わずか数日間で額面価格500億ドル以上が蒸発してしまった仮想通貨市場の大事件である。

 先月のシリコンバレー銀行(SVB)の取り付け騒ぎのように、投資家が保有する「テラUSD」や「ルナ(LUNA)」コインを投げ売りしたために1週間あまりで99%以上も暴落した。

 しかし、コインの開発者は暴落前にコインを売却し、海外逃亡した事件である。

 その開発者であるクォン・ドヒョン(英語名:Do Kwon)氏が先日モンテネグロで逮捕された。

 彼は韓国、米国、シンガポールの捜査対象になっており、インターポールの手配リストに掲載されていた。

 仮想通貨「ルナ」と「テラUSD」を運営するテラフォーム・ラボの共同創業者クォン・ドヒョン氏は、一時「韓国のイーロン・マスク」と呼ばれた。

 1991年生まれ、韓国の有名進学校であるデウォン外国語高校を卒業後、米スタンフォード大学でコンピューター工学を専攻し、シリコンバレーで就職。

 アップルやマイクロソフトを経て、仮想通貨を運営するスタートアップを立ち上げた。

 2019年4月にテラUSDとLUNAを発行し、同年フォーブスが選定した「フォーブスが選んだ30人・30歳以下のアジア人(Forbes 30 Under 30 Asia)」の金融・ベンチャーキャピタル(Finance & Venture Capital)部門に選ばれた。

 2021年3月にはテラフォーム・ラボがテラを預けると、20%ほどの収益を返却するという「アンカープロトコル」を始めた。

 自己顕示欲も強く、ツイッターを使って投資家と商談したり、様々な海外のメディアに出て自分をアピールした。

 ただし、韓国のメディアにはあまり出なかった。韓国では「暗号資産界のイーロン・マスク」と称賛した。