意見交換会終了後、記者団に取り囲まれた折木良一統幕長は「本当に冗談だと思う。指揮官としての立場は十分自覚されている上での話だと、私は認識している」と弁護したが、私にはとても冗談だとは思えなかった。

 意見交換が始まる前には、菅直人氏は北沢俊美防衛相に「ちょっと昨日予習をしたら、(防衛)大臣は自衛官じゃないんですよ」とも発言していると報じられた。これも防衛省・自衛隊関係者からすれば驚天動地の発言だ。

 憲法第66条は「大臣は文民でなければならない」と規定している。これはシビリアンコントロールの基本中の基本だ。

 さらに、自衛隊法第7条は「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」と規定している。自衛官にとって、首相が自衛隊最高指揮官であるというのは、「太陽は東から昇って西に沈みます」というぐらい当たり前の話だ。それを「改めて法律を調べてみたら・・・」と話す首相の命令で自衛官は我が国有事の際には死地に赴かなければならないのだ。

 私は菅氏の発言を聞いて頭を抱える思いだった。しかも、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、自衛官に必死の覚悟を求めたのが、菅直人首相その人だった。まるで喜劇のような話だった。