ヒットと同時に反日論争も巻き起こした『鬼滅の刃』

 筆者は最近、韓国社会で起きているスラムダンク・シンドロームを眺めながら、文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2021年に韓国で公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」のことを思い出した。

 当時はノージャパン運動が猛威を振るっていた時期で、鬼滅の刃に対する韓国メディアの報道は「旭日旗イヤリング論争」「右翼の漫画」「歴史歪曲」等の否定的な記事が多かった。記事のコメントにも「日本のアニメを見るやつらは土着倭寇」という非難が飛び交った。むろん、映画を見たとかファンであることを自認する有名人は皆無だった。

 配給会社もこれを意識してか、メジャーメディアでの露出を極度に減らし、SNSを利用した宣伝に重点を置き、公開から28週間で218万人の観客を動員し幕を閉じた。それでも当時は「反日感情が高い韓国でおさめた意外な興行」と評価されたのだが、スラムダンクはこの記録を一気に跳び越えた。公開4週間で鬼滅の刃の記録を上回り、公開6週間で観客300万人を突破したのである。

 この勢いが続けば、3月中には歴代興行1位である「君の名は」の記録(379万人)を上回るだろう。

「反日」の旗を掲げて韓国人の根深い「反日感情」を煽っていた文在寅政権が崩壊した後、韓国社会の雰囲気が一変したことこそがスラムダンク・シンドロームに一役買ったとも考えられる。実に久しぶりに訪れた日韓国民の間の「雪解けムード」が政治にも波及することを期待している。