中国側の真意は?

 米中対話の機会を再度設けてほしいという声は、中国の学者からも上がっている。

 清華大学戦略安全研究センターの達巍主任は、中国は中米関係の安定化を望んでおり、紛争回避にとどまらず正常な通商関係と人材交流を求めている主張している。

 そして、中国は以前の強硬姿勢を後悔しているからチャームオフェンシブ(魅力攻勢)を仕掛けていると考える西側のアナリストに異議を唱えている。

 実態はそうではなく、バイデン政権が国内基盤を強化して同盟国への信頼感も高めたうえで中国に関与する準備を整えるのを中国側は待っているのだという。

 達氏はさらに、米大統領選挙の前年に当たる今年が対話のチャンスだと見ており、今でも米中の協力を望んでいる両サイドの「分別のある」官僚や企業経営者、学者に慎重な期待をかけている。

 だが、今回の気球危機を両国がうまく処理できる兆しはほとんど見られないと言う。

「中国にも米国にも安定した二国間関係のためにまだ骨を折っている人はいるが、少数派だ」と懸念している。

危機管理の必要性

 新たな冷戦は最初のそれとは異なるものになるだろう。

 米国と旧ソビエト連邦の間には、ビジネスの関係がほとんどなかった。対照的に、米中間では1日当たりで約20億ドルもの輸出入が行われている。

 ところが今日では、たとえ商業関係を深めても、以前のように相互理解につながる道にならない。

 一つには、ハイテク産業から農地に至る中国の米国投資に対して、米国の政治家たちが慎重な見方をますます強めていることがある。

 2020年には、中国人所有の企業が米国で雇用する従業員の数がわずか12万人に急減した。

 また中国共産党の幹部たちは、米国人が抱いている不信感を「反中ヒステリー」と呼んでいる。

 もし習氏が危険な衝突を回避したいのであれば、ガードレールを備えた関係を築こうというバイデン氏の呼びかけに答えるべきだ。