フィリピン・マニラに寄港した米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」(資料写真、2022年10月14日、写真:AP/アフロ)

(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・経済安全保障マネジメント支援機構上席研究員・元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

 米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)は2023年1月9日、中国軍が2026年に台湾へ上陸作戦を実行すると想定し、独自に実施した机上演習(シミュレーション)の結果を公表した。大半のシナリオで中国は台湾制圧に失敗したが、米軍や自衛隊は多数の艦船や航空機を失うなど大きな損失を出す結果となった。

「要は日本」と指摘

 CSISは(1)台湾が中国に強く抵抗、(2)米軍が即座に参戦、(3)日本が米軍による国内基地の使用を容認などの条件を「基本想定」と位置づけた。この想定で実施した3回の演習のうち2回で中国軍は台湾の大都市を制圧できず、物資補給が10日間で途絶した。残る1回の演習では中国軍が台湾南部に上陸して台南の港湾を支配したが、米軍の空爆で港湾は使えなくなり3週間ほどで態勢を維持できなくなった。CSISはこのケースについて「決定的な中国の敗北と判断されないが中国に不利な膠着状態だ」と分析した。

 このシミュレーションでは、だいたい米軍は、原子力空母2隻、ミサイル巡洋艦などの艦船7~20隻、死傷者約3000人、行方不明者と合わせて約1万人、航空機168~484機を失う。日本の自衛隊は中国から攻撃を受けた場合に参戦し、軍用機112~161機と艦船26隻を失う。台湾軍は航空機の半数以上とすべての艦船26隻を失う。中国軍は、航空機155~327機、艦船138隻、地上での死傷者7000人以上、加えて海上で約7500人が死亡するという。