完全な「売り手市場」になっている中古住宅市場

(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 中古住宅価格が上がり続けているため、購入時より高く売れて、満足度の高いマイホームの買い換えを実現する人が増えている。いま完全な売り手市場になっている中古住宅市場。高く売り抜けて、希望の物件を手に入れるチャンスかもしれない。

「予想以上の価格で売れた」人が続出

 不動産仲介大手と中堅企業などで構成される不動産流通経営協会では、毎年『不動産流通業に関する消費者動向調査』を実施している。首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の戸建て・マンション住人で自宅を買い換えた人を対象に、売却した住まいがいくらで売れ、購入時の価格と比べてどうだったかなどを質問している。

 その2022年度の結果が【グラフ1】にある通りだ。これまでは売却差額(自己所有住宅の売却時の価格から購入時の価格を差し引いた額)で「マイナスの差額発生」とする割合が半数以上に達していたが、2022年度には35.0%にまで減少し、代わって「プラスの差額発生」が58.4%に増えた。これまで、購入価格より高く売れて売却益が発生した人は4割前後だったのが、一気に6割前後まで増えたわけだ。

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 購入時の価格より高く売れれば、住宅ローンが残っていたとしても、それを一括返済して、残りを自己資金に加えれば、買い換え先の購入可能金額も増える。その結果、より満足度の高い買い換えができる。

 これほど急速に「プラスの売却差額発生」が増えたのは、いうまでもなく中古住宅市場が好調で、中古マンション、中古戸建住宅が高く売れるようになっているからにほかならない。

【グラフ2】は、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)による首都圏中古マンションの成約価格の推移を示している。

 2019年7~9月期の平均成約価格が3455万円だったのが、3年後の2022年7~9月期には4355万円になっており、3年間で900万円も上がり、上昇率は26.0%に達する。直近でも四半期ごとの前年同期比の上昇率が8.2%、11.0%、11.7%と極めて高くなっている。

 これだけ上がっているのだから、有利に売却できるのは当たり前で、「予想以上の価格で売れた」「売却には時間がかかると思っていたが、あっという間に売れた」という体験談も多い。