日本には過去20年間の潤沢な蓄えがあり、震災がそれを発揮する契機になる。過去20年間の蓄えとは、円高とデフレである。
円高とデフレは、日本の賃金、株や不動産などの資産価格において本来価値(Value)からかけ離れた低市場価格(Price)を形成せしめた。価値と市場価格の差額は蓄えと言え、いずれ賃金上昇、株高となって戻ってくる。
震災後の適切なリフレ政策が実施され、賃金と資産価格が本来の価値を取り戻せば、賃金上昇と株高が起こり、日本経済を長期停滞から救出するだろう。
円安で賃金デフレは終わる
労働の価格は為替によって変化する。しかし、労働の価値は生産性によって決まるのであり、為替が変わっても不変である。だとすると、為替水準が変化することによって労働の価値と価格の間にギャップが生まれる。そうしたギャップが各国の国民経済に賃上げか、あるいは賃下げかの圧力を与える。
「失われた20年」の主因である長期にわたる賃金下落は、労働生産性を上回る円高によって日本の賃金水準が国際水準から見て非常に高くなり、引き下げる圧力が働き続けたためと考えられる。その結果、日本の労働者だけが、生産性上昇の果実を享受できなかったのである。
しかし1ドル100円になれば、日本の賃金には2割の上昇圧力が与えられる。日本の労働者は労働の価値に見合う価格を受け取ることができるようになる。