白衣の肩にマジックで書かれた「ビビアン」「ホワン」

 工場の建物に入ると、頭から足まですっぽりと白衣に覆われたおよそ100人近くの人たちが、始業を待ってうろうろしていた。

 そこにいる外国籍の人たちの多さにまず圧倒される。

 白衣の肩にマジックで、「ビビアン」「ホアン」などカタカナで名前を書かれている人が6割以上を占めている。後からわかったことだが、彼らの出身国はブラジル、ネパール、中国、ベトナム、フィリピンなど世界のあらゆる地域にまたがっていた。

 実際、こうした派遣バイトの現場はダイバーシティな環境だ。外国籍の人だけでなく、主婦、高齢者、障害がある人、フリーターやギグワーカーなどいろいろな人に出会う。リモートワークをしているホワイトカラーの方が、狭い世界で生きているのかもしれない。

 社員もパートも日雇いバイトも、すべて白衣とマスクで覆われて目だけ出している。雇用形態や経験年数は、腕にはめる腕章の色で区別されていた。

 白衣に着替えてから工場内に入るための列に並び、服のホコリを取り、手洗いを複数回行う。ここまでは社員も親切で、恐ろしいことは何もない。遊園地のアトラクションに乗り込む前のようで、ちょっとワクワクする。

 全身のホコリを吹き飛ばすエアーシャワー室に入ると、いよいよ製造現場だ。

「白衣」という名の戦闘服に身を包んだ筆者