今回の法改正で、ブロックチェーン技術を用いた金融商品は投資対象としての暗号資産と為替取引の延長線上にある「電子決済手段(=ステーブルコイン)」に分かれる(写真:アフロ)

 6月3日に資金決済法の改正案(以下、改正法)が参議院を通過してから1カ月が過ぎた。今回は3回目の改正で、これによりブロックチェーン技術を使った金融商品を、(1)投資対象としての暗号資産と、(2)為替取引の延長線上にある「電子決済手段(=ステーブルコイン)」という2つの区分に法制度上分けることができたと評価できる。

 すでに、一部ではあるが、この法律に基づく内閣府令案についての金融庁と業界団体とのやりとりも始まった。

 海外で市民権を得つつあるステーブルコインのうち、日本の改正法で「電子決済手段」とされるものは、我が国において金融機関が独占してきた銀行間市場への新規参入を促す新たな道を開く可能性がある一方、その発行体は金融機関と同レベルの規制を受ける。

 現在が「ウェブ3.0」を日本に定着させられるかどうかの分岐点だと考えれば、1年後の施行に向けて、利用者の利便性と安全性を損なうことのないよう官民双方が努力する必要がある。同時に、その結果によって、急速な技術革新を続ける世界の動きに、日本が追随できるかどうかも決まるだろう。

 6月3日の改正法制定を受けて、ブルームバーグなどの海外メディアは「日本がステーブルコイン法を制定」と報じた。これは、単なる間違いだ。

 資金決済法は、そもそも通常の為替送金やスイカのような交通系カード、ペイペイなどの小口決済等を対象とした法律で、そこに海外で注目されている暗号資産を加えたというのが現実である。

 2015年の1回目の改正では、ビットコインなどを「仮想通貨」と定義し、それを扱う会社を「仮想通貨交換所」とした。この段階では、暗号資産に対する世界に先駆けた動きと言えた。

 ところが、2018年の2回目の改正では、「仮想通貨」を「暗号資産」(つまり、通貨の一種というイメージから金融商品というイメージに変更)に改名した。ウェブ3.0という観点では後退したと言える。

 また、そもそも日本のビットフライヤーやコインチェックなどの暗号資産交換所は、東証のような「取引所」という名称を使えない。一言で説明すれば、格が違うのである。

 ただその後、ビットコインが6万ドルを超えるなど、取引量と時価総額が世界で爆発的な増加を見せた。暗号資産保有者も増える中、日本もこれを無視できなくなったというのが、今回の3回目の改正の背景である。

 同時に、日本の金融界は、通常の為替送金(内国為替、外国為替とも)におけるマネロン対策が遅れており、この対応が急務だった。暗号資産の世界でも同様にマネロン対策が弱点だった。この点も、法改正につながった重要な論点だ。 

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