2018年9月19日、平壌で開催された韓国の文在寅大統領との間で開かれた南北首脳会談後、平壌共同宣言に署名する金正恩総書記と、それをサポートする妹の金与正氏(写真:代表撮影/Pyeongyang Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ)

 北朝鮮に、「新女帝」の誕生である。

 6月11日付朝鮮労働党中央委員会機関紙『労働新聞』は、6月8日から10日まで金正恩(キム・ジョンウン)総書記が招集し、平壌で開かれていた朝鮮労働党中央委員会第8期第5回全員会議拡大会議の「公報」(コミュニケ)を発表した。

 その中で、最も目を引いたのが、次のくだりだった。

<党中央委員会政治局候補委員 チョ・チュンリョン同志、パク・スイプ同志、リ・チャンデ同志、チェ・ソンヒ同志、ハン・グアンサン同志>

「公報」に写真入りで紹介された計21人の新幹部の中で、チェ・ソンヒ(崔善姫)同志が紅一点として加わった。さらにその顔写真に付けられた肩書きには、「外務相」と明記されていた。

 すなわちチェ・ソンヒ氏は、新たに党中央政治局候補委員に選出されたと同時に、外務大臣にも任命されたのである。

外交官たちよりも偉そうな通訳

 チェ・ソンヒ新外相は、1964年に孤児として生まれたが、崔永林(チェ・ヨンリム)首相の養子として育てられた。1976年に、英語と中国語を学ぶため、北京55中学、北京外国語大学付属中学に留学、1980年に帰国した。その後、オーストリアやマルタに留学した。

 帰国後の1988年に、外交部(現・外務省)に入部した。90年代には、朝鮮労働党幹部のハン・ヨンクォン氏と結婚した。

 彼女が表舞台に登場したのは、北朝鮮の核開発問題を話し合うため、2003年に北京で始まった6者会談(日本・アメリカ・韓国・北朝鮮・中国・ロシア)の北朝鮮代表団に、英語通訳として加わった時だった。