4月5日、上海の街頭で、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、防護服姿の作業員が消毒剤を噴霧していた(写真:ロイター/アフロ)

 4月13日、「日本国際賞」の授賞式が、天皇・皇后が臨席して、東京・有楽町の帝国ホテルで行われた。これまでこの栄えある賞の受賞者のうち、実に12人もが、ノーベル賞を受賞している。

 今年の受賞者として注目されたのは、米ペンシルバニア大学特任教授で、ビオンテック上級副社長のカタリン・カリコ博士(67歳)だ。ハンガリーが世界に誇る女性科学者で、ニックネームは「コロナワクチンの母」。われわれが昨年来、2回、3回と接種した「mRNAワクチン」の開発者が、彼女だ。

 私はこの「ワクチンの母」に聞きたいことがあって、授賞式翌日の14日、短時間だが、面会して質問した。

 それは、上海のロックダウンのことだ。世界で一番、コロナウイルスに詳しい科学者に、その必要性を直接、問うてみたかったのだ。

「医学的面から言えばロックダウンは最も効果が高い」

「上海でいま、大仰なロックダウンをやっていますよね。2500万人の上海市民が、3月28日以来、ほとんど一歩も外出できない異常事態が続いています。

 あなたの母国ハンガリーでも、ここ日本でも、いや世界のほとんどの国が、すでに『コロナとの共存』に転換しています。それなのに、中国だけはいまだに『ゼロコロナ政策』に固執している。

 上海当局が今朝(14日)発表した昨日(13日)の新規感染者のうち、実に9割が、無症状です。それなのに、このようなロックダウンを、今後とも続けていく必要性があるのでしょうか?」

 彼女は私の質問を、じっと聞いていた。そしてこう答えた。

「医学的な効果ということで言えば、それは中国がやっているように、毎日家に引きこもっているのが、一番効果が高いです。また感染者をいったんゼロにした方が、その後の経済復興が早まるということもあるでしょう。

 しかし人間は生き物なので、毎日家に引きこもっていると、精神的に参ってきます。また当然ながら、社会経済も停滞します。

 そこでこの2年余り、各国ともこのメリットとデメリットを比較し、バランスを取りながらコロナ対策を立ててきました。中国もそうしたことを勘案しながら、いまの政策に至っているのだと思います」

カタリン・カリコ博士(写真:picture alliance/アフロ)