写真/アフロ

(田丸 昇:棋士)

棋士の多くが小学校の就学前後

 タイトルを獲得した一流棋士が、将棋を覚えた年齢をそれぞれ調べてみた。年代順に列記する。

 大山康晴十五世名人(享年69)は6歳、加藤一二三・九段(82)は5歳、中原誠十六世名人(74)は5歳、米長邦雄永世棋聖(享年69)は5歳、谷川浩司九段(59)は5歳、佐藤康光九段(52)は6歳、羽生善治九段(51)は6歳、森内俊之九段(51)は9歳、郷田真隆九段(50)は3歳、木村一基九段(48)は5歳、久保利明九段(46)は4歳、渡辺明名人(37)は7歳、広瀬章人八段(35)は4歳、中村太地七段(33)は6歳、豊島将之九段(31)は4歳、永瀬拓矢王座(29)は6歳、菅井竜也八段(29)は5歳、斎藤慎太郎八段(28)は5歳、藤井聡太竜王(19)は5歳。

 以上の例のように、一流棋士の多くが小学校の就学前後に将棋を覚えていた。

 年少で将棋を覚え、小学生のうちに奨励会(棋士養成機関)に入って修業し、10代のうちに四段に昇段して棋士になる、というのが一流棋士の典型といえる。

 ちなみに、女流棋界で第一人者の里見香奈女流名人(29)、藤井竜王と同年の伊藤匠四段(19)は、ともに5歳で将棋を覚えた。

 棋士が将棋を最初に教わった人は、祖父、父親、兄、小学校の友人というのが多く、大半が男性だった。藤井竜王のように祖母から教わったという例は珍しい。

 内藤國雄九段(82)が教わった兄は、学生大会で優勝するほど強かったが、そういうケースは少ない。谷川九段、羽生九段、藤井竜王の父親は、将棋をまったく知らなかった。

棋士が将棋を覚えたきっかけ

 棋士が将棋を覚えたきっかけは、主に次の3通りのパターンがある。

(1)は、大山十五世名人、中原十六世名人、米長永世棋聖、谷川九段、羽生九段など、時のスター棋士に憧れた、というもの。現代なら藤井竜王の活躍で将棋を覚えた子どもたち。

(2)は、新聞の将棋欄に載っている専門用語(王手飛車、手順前後など)や不思議な数字(7六、5五などの符号)を見て将棋に興味を持った、書店で見た将棋の本に大好きな漢字が載っている(図面の駒)、というもの。

(3)は、将棋を題材にしたNHKの朝ドラマ『ふたりっ子』をテレビで見た、同じく『月下の棋士』などの将棋漫画を読んだ、好きな芸能人が将棋を愛好していた、というもの。