48年前に有吉佐和子が見抜いた人間性

 しかし、菅氏の「暴走」については、いまにはじまったことではない。いまから48年前に、当時の菅直人青年の「暴走」ぶりを指摘し、命を奪われる危険性すら懸念していた著名な作家がいる。

“才女”とも称された有吉佐和子だ。彼女が著して話題となった『複合汚染』の中に、若かりし日の菅直人の描写がある。

有吉佐和子(主婦と生活社 撮影者不明, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で)

『複合汚染』は、1974年10月14日から8カ月半にわたって、「朝日新聞」朝刊の小説欄に連載され、単行本化されるとベストセラーとなった。

 小説というよりはノンフィクションで、もともとは米国の生物学者レイチェル・カーソンが1960年代に、農薬汚染など現代に通じる環境問題をはじめて指摘して世界中に衝撃を与えた『沈黙の春』が基調となっている。

 当時の日本でも、農薬や化学肥料による土壌汚染にはじまり、食品添加物を交えた食品汚染、化学洗剤による河川、海洋汚染の実態、さらには自動車排気ガスによる大気汚染などが、相乗的に絡み合い、環境を破壊し、健康被害をもたらす実情を、総合的に描いたものだった。

 この作品の冒頭は、1974年夏の参院選に立候補する市川房枝の選挙活動の裏話からはじまる。著者は市川の選挙応援演説のため、数寄屋橋を訪れたところで、石原慎太郎とすれ違う。――そう、この2月1日に亡くなった作家で元東京都知事の石原慎太郎だ。そこで著者は石原に当時、噂されていた都知事選の出馬の意向について話を向けるのだが、煙に巻かれて終わる。実際に、石原は翌年の都知事選に立候補するのだが、現職の美濃部亮吉に敗れている。都知事になるのはそれから25年後のことだ。