(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 私は経産省のOBですが、今年は霞が関で耳を疑うようなニュースがありました。

 昨日(12月21日)、ちょうどそれぞれ実刑判決・執行猶予付き有罪判決が言い渡されたところですが、経産省の若手キャリア官僚2名が逮捕されたニュースです。今年6月、新型コロナ感染拡大の影響によって売り上げが減った中小企業などを支援する「家賃支援給付金」と「持続化給付金」、併せておよそ1500万円をだまし取ったとして、逮捕されました。

 すでに11月に開かれた公判の時点で、2人とも全面的に容疑を認めていると報じられていましたが、いずれにしても、困っている国民に給付金を配る側の役人が、そのおカネをペーパーカンパニーを使って不正に受給し、特に桜井真被告は、都心のタワーマンションでリッチな生活を満喫していたというのですから、言語道断です。公僕として全く話にもなりません。

官僚の不正は霞が関の構造に起因しているのか

 こういう事件が起きると、「役所の組織に問題があるんじゃないのか」「まだバレていないだけで、他にもやっている役人がいるんじゃないか」などと世の中の人は思うことでしょう。

 そうした見方に対して、霞が関に身を置いていた経験から言わせてもらえば、基本的には「No」です。です。体感的には、こうした不正や詐欺行為の原因の8割は、個人的資質によるものです。私が知り限り、私が現役官僚だった当時、今回の被告のような人物は基本的にいませんでした。比較対象国にもよりますが、一般論として、諸外国に比べて日本の役人は、まだモラル(倫理観)が高いと言って良いと思います。

 しかし、官僚の不正の2割程度は役所の構造的な問題にも起因しているように思います。今回はそこを3つの観点から考えてみたいと思います。第一に採用の問題、第二に仕事へのモチベーションやモラル維持の問題、第三に国民や社会への奉仕よりも自分自身の金銭的利益やキャリアアップを優先してしまうという問題です。