コロナ禍によって一気に広がったテレワークは今後も定着し、ハイブリッドな働き方の時代になっていくことが想定される。そこでの課題としては何があり、ハイブリッドワークで成果を上げていくには何が必要となるのか。日本無線株式会社 デジタル変革推進室長 経営戦略本部 副本部長 事業本部 副本部長 ものづくり戦略本部 副本部長 執行役員 熊谷 博氏、日本マイクロソフト株式会社 デバイスパートナーソリューション事業本部 ビジネス開発室長 河野 万邦氏、株式会社ロジクール ビデオコラボレーション法人事業本部 ビデオコラボレーション法人事業本部長代理 横山 大介氏がそれぞれの立場から語り合った。

テレワークによって見えてきた新たな課題

横山 コロナの影響で働き方が大きく変わってきたと感じています。具体的にどこがどう変わり、どんな課題が見えてきたとお考えでしょうか。

日本無線株式会社 デジタル変革推進室長 経営戦略本部 副本部長 事業本部 副本部長 ものづくり戦略本部 副本部長 執行役員 熊谷 博 氏

熊谷 もともと介護や育児などのために制度化したテレワークが一気に広がりました。しかし、生産ラインで働く人はテレワークをすることができずに、事務職との不公平感が生じています。また、テレワークをしている人には運動不足による健康不安もあります。

 コロナ禍下においても、企業としての最大の課題は、企業価値向上、新規事業創出、収益性改善などであり、その実現に向けてテレワークという働き方を一時的な取り組みではなく定着させることが、新たな課題として見えてきました。そこでは短期と中長期の経営視点を持って取り組むことが必要です。短期的に見れば働き方の選択肢が増えることになり、そのための環境づくりが求められ、中長期的には事業活動の選択肢が増えることになり、拠点戦略やサプライチェーンの見直しが求められるようになります。

日本マイクロソフト株式会社 デバイスパートナーソリューション事業本部 ビジネス開発室長 河野 万邦 氏

河野 この一年で働く環境は大きく変わりました。「Microsoft Teams」のユーザ数は一年で倍増し、企業や組織・機関での利用も増え、分かりやすいところで表現すると日経225の94%で使われています。ワクチン接種が進み、出社する頻度は増えつつありますが、オフィスと在宅を組み合わせたハイブリッドな働き方は定着していくと考えています。

 一方、オフィスに戻ると快適に仕事ができないという課題も生じています。オフィスでは周囲に人がいたり、会議室が足りないためにWeb会議がスムーズに行えません。会議室でのWeb会議への参加の仕方にも課題が見えてきました。Web会議をしながらではPCの操作が煩雑になり、自分のPCだけでは不便さを感じる人が増えています。

株式会社ロジクール ビデオコラボレーション法人事業本部 ビデオコラボレーション法人事業本部長代理 横山 大介 氏

横山 大事なことは双方にメリットがあるWin-Winを探すことですね。個人としては時間を効率的に使えるようになりますが、モチベーションを保つためにはエンゲージメントが必要です。オフィスもただ出社する場所ではなくなり、コラボレーションや気付きを得るための場所に変わっていきます。

 ただ、今回世界が同時にパンデミックに直面したことで、社外も含めてハイブリッドワークに移行したことは大きな変化です。どこからでもコミュニケーションできる環境が必要になり、ビジネスチャンスがあると考えています。

変化を見据えた戦略的な取り組みを

横山 これからの変化に対応する取り組みについても教えてください。

熊谷 アフターコロナを見据えて変革プロジェクトを立ち上げ、そのテーマの一つにデジタル変革を取り入れた働き方改革を挙げています。労働人口の減少と売上の拡大というトレードオフを解決する鍵は2つの「D」、ダイバーシティとデジタルトランスフォーメーション(DX)です。

 特にDXによって働く場所の柔軟性を高め、業務の効率化を進め、それを支えるデジタルトランスフォーメーションを推進するという3つを柱とした働き方改革で会社全体を変革していこうとしています。

河野 当社ではオンラインとオフラインを融合させたハイブリッドワークを提唱し、5月21日にグローバルでThe hybrid work paradox というLinked in 上のブログを通して「ハイブリッドワークビジョン」を発表しました。同時に約30ページのハイブリッドワークの実行ガイドを電子書籍として配布し、具体的な取り組み方法について提示しています。

 実行ガイドでは「People」「Place」「Process」の3つの「P」をテーマに、モチベーション高く快適に働くためのソフト、ハードのガイダンスとツール、ITを駆使した場所を選ばないで働けるハイブリッドワークプレイス、ハイブリッドな仕事の進め方や社内のインフラを解説しています。

 ハイブリッドワークでは今まで社内に集約されていたITリソースに加えて、クラウドベースのプラットフォームも活用するので、そこでのセキュリティについても触れています。各国でダウンロードされて、日本でも大きな反響をいただいています。

横山 日本無線様がビデオ会議用の「Microsoft Teams Rooms」を導入するだけでなく、ハイブリッドな人材活用を進め、アナログとデジタルを融合させて属人的なプロセスの改革に取り組んでいるのもその好例ですね。

 当社では、ビデオコラボレーションに関する世界の事例を集めて公開しています。世界中のエキスパートの知見を活用するシーメンス様やライブ会場ではないところでライブを上演しているライブネーション様のような様々な事例を紹介しています。

 正解のない世界ですが、取り組んでいる企業はたくさんあります。是非、参考にしていただきたいですね。

変化をチャンスに変える成功要因と戦略とは

横山 今、求められているのは変化をチャンスに変えることです。そこにはどんな成功要因があるのでしょうか。

熊谷 変化を前向きに捉えてチャンスだと考えて取り組むことです。例えば、新型コロナの影響で海外への渡航が禁じられ、設置工事や調整のために技術者が現地に行くことができなくなり、リモートで現地のスタッフに作業を指示するようになりました。

 もともと日本人の技術者が行かなくてもできるだろうとは思っていたのですが、新型コロナがきっかけになって一気に進みました。従来の仕事は場所や人に紐づいていましたが、デジタル化で時間や場所に依存しない方法を見出すことができたのです。

 工事や調整のための出張や社内会議のための移動を減らすことは、経費の削減につながりますが、地球温暖化を防ぐことにもなります。デジタルの活用によって持続可能な社会を実現するという使命にも貢献できるのです。

河野 アイデアを生み出すディスカッションでは、表情や声のトーンなど、非言語コミュニケーションが重要です。

 オンラインでは難しい非言語コミュニケーションをデジタルの力でできるようにしたのがMicrosoft Teams Roomsです。4Kの高画質カメラや高品質のマイクを駆使したり、ハートマークなどの絵文字やキャラクターのジェスチャーで実際に会うのと同じような意思疎通ができるようになります。

 会議室をデジタル化してどこからでも参加できるようにして、非言語コミュニケーションを可能にすることは、ディスカッションの質も量も向上させます。「人」中心のコミュニケーションをオンラインで実現するプラットフォームは、ビジネスチャンスを生み出す大きなトリガーになるのです。


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横山 オフラインの持つ価値をオンラインでも維持して、そこにデジタルの優位性を加えたい時に、Microsoft Teams Roomsはひとつの解だと言えますね。

オンラインとオフラインのコラボレーションへの対応

横山 ハイブリッドワークに向く組織、向かない組織の違いはどこにあるのでしょうか。

熊谷 当社の事業はハイブリッドワークなしでは成り立ちません。技術者が日本にいながら現地のスタッフに指示を出すというハイブリッドワークの例を挙げましたが、こういうスキームを組めるようになったことで、より多くの物件をこなせるようになりましたし、現地スタッフのスキルの向上につながっています。

 テレワークによって業務の効率がどう変化したかというアンケートをとった時に、アップよりダウンの方が多かったのですが、決算で業績は下がっていません。それについて社内で議論しているところですが、全体としてはプラスの効果が大きいと感じています。戦略的に進めていけば必ず成果が上がるはずです。

河野 ハイブリッドワークは業界を問わずに有効だと考えています。一般企業だけでなく、ビデオ会議が多い医療業界や教育業界では特に有効でしょう。

 日本には110万の会議室があり、そのうち19%しかデジタル化されていません。会議室に各種デバイスが導入され、ソリューションが普及することでより有効なコミュニケーションが生まれてきます。

 Microsoft Teamsはすでに相当普及していますが、Windows11に標準で搭載されることでさらに普及は加速していきます。それに伴ってハイブリッドに人をつなぐMicrosoft Teams Roomsも普及していくでしょう。

 新規導入支援プログラムなど、パートナーとの共同マーケティングを強化して、次のフェーズの新しいコミュニケーション環境を担うソリューションとして、お客様の課題解決に貢献していきます。


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横山 もともと仕方なく始まった感じのあるテレワークですが、今は一般化して新しい価値を生み出しつつあります。これからオフラインとオンラインのコラボレーションが爆発的に増えてくるはずです。当社は今後もMicrosoft Teams Roomsの普及に向けて最適なデバイスを提供していきます。

 ハイブリッドワークで組織力を最大化するには、生産性の高いリモートワークの環境を戦略的に考え、場所と時間を超えたチームによるイノベーションを促し、「人」中心のコミュニケーションから新しい価値を創造することが必要です。

 当社は個人に向けては雑音のない安定したアクセス環境を提供し、組織には会議スペースをリモートワークに対応させるソリューションであるMicrosoft Teams Roomsを提供し、オフィスでも自宅でも個々の能力が最大限発揮できる環境の構築を支援していきます。