名古屋のソウルフード、ひつまぶし。普通に食べてよし、わさびをつけてもよし、お茶漬けもよしとひとメシで3回楽しめる(写真:Kuri2000/イメージマート)

 7月28日は土用の丑の日だった。韓国のスーパーで土用の丑の日に特売品の鰻の蒲焼を目にする機会はないが、この夏、韓国ではある変化が起きている。名古屋めしの一つ、ひつまぶしがじわじわと流行の兆しを見せ始めているのだ。

 韓国にも土用の丑の日と似たような日がある。1年の暦の上で、一番暑い盛りに来る「伏日(ポンナル)」だ。伏日には、参鶏湯やユッケジャンなどのスタミナ料理を食べる習慣がある。今は少なくなったが、犬のスープも伏日にスタミナ料理として食されていた。

 韓国で鰻はチャンオという。鰻が採れる地域のローカルフードとして知られているが、日本と同様、高級な魚である。塩焼きか、カンジャンやコチュジャンといった甘辛い味付けで、主に酒のつまみであり、ご飯と一緒に食べることはほとんどない。堂々とご飯の上に乗っている日本の鰻と比べると、やや影が薄い存在かもしれない。

 そんな韓国でも、日本の鰻料理はよく知られている。韓国人が好きな日本食として挙げられることが多い料理の一つである。

 数年前、日本でも活動していた東方神起の元メンバー、キム・ジュンスさんが日本のバラエティー番組で、好きな日本料理としてひつまぶしを紹介してから、日本人はもとより韓国人の間でも知られるようになった。

 ひつまぶしは名古屋のローカルフードだが、韓国のガイドブックが「ひつまぶし特集」を組んで名古屋の有名店を紹介し、「名古屋のひつまぶしを食べに行こう」というグルメ番組の特集がユーチューブで何度も再生されるほど人気がある。

 ひと昔前まで、本格的なひつまぶしは日本に行かないと食べることができなかったが、最近、ソウルや釜山に有名店が登場した。名前はそのまま“ヒツマブシ“だ。ただ、ちょっと特別な日に食べたい日本料理としての地位こそ確立しつつあったが、値段が高いことから流行までには至らなかった。

 ところが、この夏、じわじわとひつまぶしブームが広がりつつある。これは韓国の社会事情と関係している。コロナ禍によるステイホームと、発達し続ける出前文化が背景にある。