橋本会長、尾身会長発言に「開催は合意済み」「専門家の知見伺っている」と反論

 ところが、有識者であるはずの尾身会長の提言に関して問われた組織委・橋本会長は「5者会談で開催は合意済み」と強調するとともに「すでに専門家の知見を伺うなど行っている」と反論。その「専門家」の具体名は明らかにしないまま一方的に言い放った。ネットやSNS上で「組織委会長として責任ある立場に置かれていながら、余りにも酷過ぎる暴論」「尾身会長こそ政府が任命した専門家のトップではなかったのか」などと“正論の嵐”が吹き荒れたのも至極当然であろう。

3月25日、参議院予算委員会に出席した政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(写真:つのだよしお/アフロ)

 菅義偉首相と確執が生じているともっぱらの尾身会長だが、政府から新型コロナウイルス感染症の権威と位置付けられているにもかかわらず組織委トップからも“スルー”されてしまった格好だ。「開催ありき」で突っ走る「5者」の“暴走”はここにきて、いよいよ制御不能になって来た感がある。

 ただ、日本だけでなく世界の主要メディアからも「東京五輪が一大感染イベントになる」(米紙ニューヨーク・タイムズ)などと警鐘を鳴らされていることを考えれば、今後ムーブメントが激しさを増した末にIOCが急転で中止を宣告する可能性も十分あるはずだ。

 菅首相が23日の会見で東京五輪について「開催はIOCが権限を持っている」と語って“日本はIOCの言いなりなのか”と世間から猛批判を浴びたが、そのIOCが仮に「中止」を宣告するとしたら首相の説明通りに日本はスンナリと受け入れることになるのだろうか。前出の「5者協議」でもすっかり前のめりになっていた日本側3人のトップに少なくとも、その意思があるようには到底感じられない。