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政権発足に向け、通商代表候補などを発表したバイデン氏(2020年12月11日、写真:AP/アフロ)

(文:渡部恒雄)

 12月14日、米大統領を正式に選出する選挙人による投票が行われ、民主党のジョー・バイデン前副大統領が当選に必要な選挙人の過半数を上回る306人を獲得し、次期大統領に確定した。

 ドナルド・トランプ大統領は引き続き敗北宣言をしていないが、翌15日、共和党の指導者ミッチ・マコネル上院院内総務は、党派は違うが長らく上院議員として職責を共にしてきたバイデン氏に祝福を贈った。

 バイデン政権にとっては、選挙人投票で勝利したことで1つの山を越えたことになる。トランプ大統領は投票に不正があったとして、接戦州における共和党の選挙人に、12月14日の投票日にバイデン氏に投票しないように圧力をかけてきたからだ。

 しかしひと山越えたことで、別の問題が浮上してくる。これまで、トランプ大統領との激しい選挙で共闘し、バイデン勝利を否定してきた共和党に対して怒りを共有してきた民主党内の中道派と左派が、共通の敵を失うからだ。

 これは政権人事にも反映するだろう。

 しかも民主党上院は、来年1月5日のジョージア州での上院の2つの決選投票で、運よく2議席で勝利してもかろうじて50対50となり、上院議長役のカマラ・ハリス次期副大統領の1票差だけという薄氷の過半数であり、むしろ過半数を得られない可能性のほうが高い。

 政権人事、特に議会の承認が必要な職については、共和党議会が拒絶するような人物は承認されないが、一方で、共和党が納得する中道の人物ばかりでは、バイデン当選に協力した党内左派(進歩派)が納得しない。

議会共和党との協力か、大統領権限での独断か

 経済チームでいえば、ジャネット・イエレン元連邦準備制度理事会(FRB)議長を財務長官に指名した人事は、共和党議会と市場の容認と、格差解消を重視する党内左派への配慮の双方に目配りをした絶妙な人事だった。

イエレン氏(バイデン陣営公式政権移行HPより、以下同)

 イエレン氏は、ジェローム・パウエル現FRB議長の前任で、オバマ政権からトランプ政権まで好調な経済を維持し、市場と共和党の信任を受けている上に、左派からは労働経済学の専門家として経済格差解消に熱心な人物として期待されている。イエレン氏は指名後の記者会見で、コロナの影響に対して「緊急に動くことが肝要だ」と発言しただけでなく、人種や性別による賃金、住宅、雇用機会の格差など「より深い構造問題を改善する義務がある」と述べた。

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