イラク・バスラ北部の油田。「汚いエネルギー」に出番はない(写真:ロイター/アフロ)

 9月28日、私が代表を務めるインデックスコンサルティングと私が関係する3社団法人(注)が主催・協賛し、フランスの思想家・経済学者のジャック・アタリ氏を招いたオンラインシンポジウムを開催しました。

 注:一般社団法人建設プロジェクト運営方式協議会一般社団法人環境未来フォーラム一般社団法人PPP推進支援機構

 新型コロナウイルスの感染拡大によってわれわれの日常は一変しました。ロックダウンによって経済は止まり、「三密」、言い換えれば賑わいを前提としたビジネスは修正を余儀なくされています。ウィズコロナ、あるいはアフターコロナの時代に働き方やコミュニティ、ビジネス、国際情勢はどのように変わるのか。それに対するアタリ氏の視座を幅広く共有すべく、アタリ氏の講演録を公開したいと思います。

 その前に「お前は誰だ?」という疑問もあると思いますので、アタリ氏の講演録の最後に、インデックスコンサルティングと今回のシンポジウムに至った経緯について簡単に説明しています。よろしければご覧ください。

 願わくば、アタリ氏とその後のシンポジウムの話を聞いて、感染症と共存する時代に地球規模の課題にどう立ち向かうか、それぞれが考えていただければと思います。それでは3回目をどうぞ(1回目2回目)。(インデックスコンサルティング代表取締役、植村公一)

パンデミックで脚光を浴びる「命の経済」

 今回の危機によって変化が加速する現象の一つとして、新たな経済部門が登場することが挙げられます。私はこれを「命の経済」と呼んでいます。この部門は極めて重要です。

 今回の危機をきっかけに、過去数十年間、重要視されていた部門でも重要度を下げた部門があります。例えば、日本とヨーロッパの経済の中核をなす航空機産業や自動車産業です。
 
 自動車産業の場合、公共交通機関の利用時に感染を避けるという意味では重要度が増したかもしれませんが、ほとんどの人はマイカーを短期間に買い替える必要などないと思うようになりました。今回の危機により、社会ではある種の質実剛健さが求められるようになったのです。
 

「航空機の墓場」と言われる米ヴィクタービル空港。気軽に世界中を旅する時代は終焉を迎える(写真:ロイター/アフロ)

 また、プラスチックなどの化学産業の重要度も失われました。アパレル産業も同様です。人々は、服を頻繁に買う必要などないと気づきました。そして、石炭や石油に関連する産業も、持続的な有用性を持たないということが明白になっています。