同じようにコロナ対策で、雇用調整助成金や上述の一律10万円の特別定額給付金も配られましたが、この給付作業については「実際に配られるまであまりにも時間がかかりすぎる」といった猛烈な批判が浴びせられました。この雇用調整助成金や特別定額給付金の手続きを担当したのは公務員です。もちろん彼らは、間違いが起こらないよう正確性を担保しながら作業に当たったはずです。そのぶん時間もかかります。各自治体の公務員はこれらの作業で手一杯でした。

 ですから、持続化給付金は民間の力を借りて配るしかなかったと思います。そういう背景の中、「作業を委託された団体は電通に丸投げした」、「電通はさらに関連会社に丸投げしたが、そこで中抜きした額が大きすぎる」、「経産省幹部と電通の関連団体幹部が癒着している」といった“疑惑”が世の中を騒がすことになりました。

コストをかけて公平中立を目指すか、公平中立を少々犠牲にしてでも効率を重視するか

 2つ目のトレードオフは、コストに関わる問題です。もうすでに何年も前から、「民で出来ることは民で」、「官民連携」、「小さな政府」といった合言葉の下で、行政の仕事がどんどん民間に外注されるのが当たり前になっています。この流れのお陰で、日本は現在、世界的に見ても人口当たりの公務員が非常に少ない国となっています。公務員の中に、本来は公務員にカウントされない独立行政法人の職員を含めてカウントしても、やはり日本の公的セクターに従事する人は少ないのです。

 そうした中で、持続化給付金の給付作業を公務員にやらせようとするなら、その分、公務員を雇わなければなりません。つまり、「公正・中立をとことん重視するためにコストをかけて公務員をたくさん雇う」という道を選ぶか、あるいは「公正中立性を多少犠牲にしてでも効率の良い行政を目指す」という道にするのか、ここにもトレードオフの関係があります。

 平時であれば、われわれの国民的選択として後者を選ぶことに異議を唱える人はほとんどいないと思います。もちろん野党やマスコミも同じような理解のはずです。だから普段は「民でできることは民で」というスタンスです。ところがいざ何か問題が起きると「公平性が担保されていない」「行政なのに正確でない」と一斉に批判します。しかし、コストを重視して「民でできることは民で」という道を選んだのであれば、時には正確性や公平性に問題がある場合も出てくる――そういった理解が必要だと思います。

「電子政府化」という最適解

 さて、ここからが本題です。実は、究極の解決策があります。別の言葉で言えば、この問題で浮き彫りになった政府の弱点は「電子政府化が驚くほど遅れていたこと」なのです。こここそ、メディアも野党も、そして国民も最も強烈に批判し、改めさせるべき点です。

 さまざまな給付金で電子申請ができ、それをスムーズに処理できる態勢ができていれば、スピーディに、正確さを損なわず、ローコストで国民にお金を配ることができたはずです。つまり先ほどのトレードオフの関係にあった要素をすべて満たしつつ、処理できる究極の解が電子政府化なのです。持続化給付金の問題で言えば、受託者に委ねられた約769億円のうち400億円以上が、パソコンの設置や申請に関する指導のコスト(受付会場での申請支援費用)だったと言われています。