今週は日頃ロシアの記事を寄稿してくれている日台健雄さんの2部作がよく読まれた。「高すぎる原発の発電コスト、LNG火力で代替せよ」と「原発を不要にするシェールガス革命」である。ロシアのウラジミール・プーチン首相が東日本大震災後、間髪を入れずに日本への液化天然ガス(LNG)供給を申し出てくれた背景がよく分かって面白い。
中東に依存しないLNG
驚くべきことに、高騰を続ける原油をよそに天然ガスの価格は上がるどころか値下がり気味だというのである。しかも供給はだぶついているので、原油のように投機筋のターゲットになりにくい。
また、日本が輸入しているLNGは原油と違って中東に依存していない。2005年の輸入元は最も多かったのがインドネシアで全体の25%、次いでマレーシアの23%、オーストラリア17%、カタールとブルネイが11%となっている。
アジア・オセアニアの4カ国で全体の76%を占めていて、中東の依存度は極めて低い。さらにそのアジア・オセアニアののシェアもこのところ低下傾向にあるという。
その最大の理由がロシアだ。ロシアからの輸入が増えた結果、アジア・オセアニアからの輸入がこの5年間で11ポイント減って2010年には65%となった。
ロシアからの輸入が増えているのは天然ガスの価格低下と世界的な供給のだぶつき。その背景にあるのがシェールガス革命と呼ばれるものだ。
米国のシェールガス革命に焦るロシア
「このシェールガス革命とは、主に米国において従来は技術面およびコスト面で採掘が困難であった部分に埋蔵する天然ガスが、技術進歩とそれに伴うコストの低下で採掘が採算に合うようになり、その結果もたらされた米国産天然ガスの増加によって世界の天然ガス供給に生じている影響のことである」
「シェールガス(shale gas)は、頁岩(シェール)に含まれている天然ガスのことであり、非在来型天然ガスの一種である」
米国では2005年頃からシェールガスの生産が急速に増え始めた。このシェールガス同様にこれまで採掘が難しかった炭層メタン、タイトサンドガスを加えた非在来型天然ガスの総生産量は2010年には米国の約半分に達しているそうだ。
「近年、これらの非在来型天然ガス、特にシェールガスの生産量が米国において急増していることを背景に、世界の天然ガス市場に変化が生じてきている」