今回は、ニュースで目にすることの多い2つの「放射線量」の単位について、測定器の動作原理にさかのぼってお話ししたいと思います。
4月12日付で原子力安全委員会は3月11日から4月5日までの間、大気中への一部の核種の放出総量として、
ヨウ素131が1.5×1017ベクレル
セシウム137が1.2×1016ベクレル
相当が出ている、という、測定値を基にする試算結果を発表しました(PDF)。
実はここで「ベクレル」単位で「放射能の量」を示すことには、原理的に無理があるのですが、このあたりのことを、きちんとお話ししておきたいと思うのです。
定義に帰って:「打率」と「打点」の違い
原発内部の状況や、各地の放射線量を表す単位として、先ほどから使っている「シーベルト」という言葉が登場します。また、水道水中の放射性物質や野菜の放射能汚染などの話では「ベクレル」という単位が使われます。
「ベクレル」と「シーベルト」、2つが混乱して紛らわしい、という意見を聞きますが、違う単位が出てくるからには、何か理由があるはずです。
それを、測定原理からきちんと理解しておくと、これらの値のどちらも、目安にしか過ぎないけれど、各々参考になるものだ、とお分かりいただけると思います。
最初に乱暴に説明すれば野球の打者評価で考えて「ベクレル」は「打率」と似ており「シーベルト」は「打点」と似ています。
野球に詳しくない方もおられると思うので、おさらいしておくと「打率」というのはバッターが打席に立った時にヒットを打つ割合で、3割バッターと言えば10回打席に立つと3回の高い確率でヒットを打つ選手ということです。
これに対して「打点」というのは、自分が打ったヒットによって、チームにどれくらい点が入ったかということで、例えば満塁で迎えた4番打者がホームランを打てば、本人が打った球は1つですが、合計4打点が入ります。