各国の年金制度を比較したコンサルティング会社の調査結果が話題となっている。日本の公的年金の格付けは、韓国や中国、アルゼンチンなどと並んで世界最低ランクという位置付となったが、日本の公的年金はどこに問題があるのだろうか。(加谷 珪一:経済評論家)
日本と同じDランクは新興国ばかり
米国のコンサルティング会社マーサーは、世界各国の年金を評価した「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング」2019年度版の結果を発表した。結果はAランクからEランクまで区分されているが、Eランクに該当する国はなかったので、事実上、A~Dまでの4ランクとなっている。日本は最低ランクのDに分類されており、全体の順位としては37カ国中31位だった。
Dランクの国名を見ると、点数が高い順に、韓国、中国、日本、インド、メキシコ、フィリピン、トルコ、アルゼンチン、タイとなっている。日本以外の国名を見ると、基本的に新興国に属する国ばかりであることが分かる。
近年、韓国や中国に対して何かと敵視したりライバル視する日本人が増えているが、Dランクにカテゴライズされた国々を日本と同水準のライバルと考えるなら、妥当な結果といえるかもしれない。だが、日本を欧米並みの先進国と見なすのであれば(つまり日本は、中国や韓国、トルコなどとは違う国であると考えるのなら)、この順位に甘んじているのは大きな問題だろう。
では日本の公的年金制度は、先進諸国と比較してどこに問題があるのだろうか。
ランキングを決める評価項目は、「年金が十分に支払われているか」「年金制度に持続性があるか」「制度が誠実に運用されているか」の3つである。一般論として、年金をたくさん払えば年金財政が悪化し、逆に財政の健全化を優先すると給付は少なくなる。また、制度の仕組みや運用体制がしっかりしていない場合、過度なバラマキが行われたり、運用リスクが大きくなるといった理由から、安定した給付ができなくなる可能性がある。