米カリフォルニア州のカリフォルニア大学サンタバーバラ校で量子コンピューターを開発するグーグルの研究チーム(提供:Google/ロイター/アフロ)

 カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校に拠点を置くグーグルの量子コンピューター開発チームが「量子超越性(Quantum Supremacy)を実現した!」との報道が流れ、世界的に大きな反響がありました。

 まず9月中にNASAから間違ってペーパーが公開され、ついで10月23日にネイチャー(Nature)誌に正規の公刊(https://www.nature.com/articles/s41586-019-1666-5)があったものです。

 どれくらい中身が理解されているかは別として、ビットコインなど仮想通貨価格が上下するなど、影響が見られました。

 しかし、いったいそこで何が実現したのでしょう?

 原著を理解するのには、量子ゲート計算の数理と計算可能性の情報科学、それに極低温物性実験やデバイス加工の知識が揃わないと歯が立たず、なかなかモノにするのは難物です。

 これは全くの偶然なのですが、論文のエンドオーサー、プロジェクト・トップのジョン・マルティニスは、私がかつて極低温物性物理研究の末端に関わっていた頃の分野と重なる人物で、私の出身研究室の先輩や後輩にもこの分野で仕事をしている人がいます。

 そこで、いろいろ教えてもらいながら、多岐にわたるグーグルペーパーの一通りの概要を押さえるようにしてみました。

 量子ゲート計算は今後の情報テクノロジーの世代交代、特にセキュリティのシフトを左右する最大のカギを握る分野と考えられます。

 以下ではグーグルの論文が何を主張しているのか、そのポイントと並行してセキュリティの世代交代という観点からの意味づけを検討してみましょう。