ウクライナを見よ、
原発事故でも農業は揺るがない

2011.04.11(Mon) 川島 博之
筆者プロフィール&コラム概要

 福島第一原子力発電所の事故により、福島の農業が大きなダメージを受けている。

 一時は野菜や牛乳などに対して、出荷の停止や摂取を制限する措置が講じられた。その後、放射能の影響が低下したために、多くの品目で出荷制限などの措置は解除されたものの、事故がいつ収束するかが分からない現在、今後を見通すことが難しくなっている。土壌の調査が終わるまでは、田植えができるかどうかも分からない有り様だ。

コメも野菜も不足することはない

 福島の農業は、風評も含めて、甚大な被害を被った。まず、このことが日本の食料供給にどのような影響を及ぼすか検討してみよう。

 農林水産省によると福島の農家数は約9万7000戸、コメの作付面積は約8万ヘクタールである。また、野菜は路地と施設栽培を合わせて4980ヘクタールだ。これが日本の農業に占める割合は、農業人口やコメの作付面積が4~5%、一方、野菜は2%程度である。

 ここで、もし福島県でコメの生産ができなくなっても、日本には100万ヘクタールほどの休耕田があると言われているから、他の地域の減反を緩和すれば不足することはない。また、野菜についても、栽培面積が全国の2%しかないことから、それが需給に大きな影響を与えることはなさそうである。

 このため、もし仮に、福島県で農業を行うことができなくなっても、それが日本の食料供給に大きな影響をもたらすことはない。

 ただ、原発事故が長期化し、茨城、栃木、群馬でも農業を行うことが難しくなると、そこが首都圏へ野菜の供給基地になっているだけに、大きな影響が出る可能性がある。一刻も早く原発事故が収束し、放射性物質が現在以上に拡散することがないことを祈るばかりである。

 ここまでは、比較的短い期間の影響について考えてみた。以下は、もっと長期的な影響について考えてみたい。

農業国ウクライナを襲ったチェルノブイリ事故

 原子力発電所の事故の話では必ず「チェルノブイリ」という言葉が出てくる。言うまでもなく、人類が経験した最大の原子力発電所の事故であり、原子炉に用いていた黒鉛が火災を起こしたことにより、多くの放射性物質が放出された。

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東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。1953年生まれ。77年東京水産大学卒業、83年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得のうえ退学(工学博士)。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現職。主な著書に『農民国家 中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』など


農業の進む道

就業者の高齢化と減少、国際競争力の欠如など、様々な問題を抱える日本の農業。農業改革が遅々として進まないのはなぜか。農業を覆う問題の構造を明らかにし、あらゆる方面から日本の農業を活性化する方策を探る。