日本自動車工業会の会合に出席したトヨタの豊田章男社長(2019年9月26日、写真:AP/アフロ)

 トヨタ自動車がスバルに追加出資し、同社を持分法適用会社にすることが明らかとなった。トヨタは2017年にマツダと資本提携し、今年(2019年)の8月にはスズキとの資本提携も発表している。国内の弱小自動車メーカーはすべてトヨタに吸収されていくという図式だが、トヨタにすべてを抱え込む余裕はあるのだろうか。(加谷 珪一:経済評論家)

EV時代、小さいメーカーは圧倒的不利に

 現在、トヨタはスバルの株式を17%保有しているが、これを20%以上に引き上げて持分法適用会社とする。スバルもトヨタの株式を保有し相互出資するが、実質的にスバルはトヨタに取り込まれることになる。

 よく知られているように、スバルは旧陸軍の戦闘機「隼(はやぶさ)」の開発・製造を行った中島飛行機をルーツとした企業であり、航空機を製造していたメーカーのこだわりから、水平対向エンジンという特殊なエンジンを軸に製品開発を行ってきた。このためスバルのクルマには独特のコンセプトがあり、一部の熱狂的なファンを獲得してきたという経緯がある。

 スバルはニッチメーカーとしてキラリと光る存在だったわけだが、世界シェアの低さと独自の技術体系は、コモディティ化が進む市場では逆に不利になる。同社はこれまで日産、米ゼネラル・モーターズ(GM)、いすゞなど、各社との提携を模索してきたが、技術の独自性がネックとなり、どれもうまくいかなかった。最終的にトヨタが資本参加し、トヨタの下で独自路線を模索したものの、とうとう今回の持分法適用によって完全にトヨタに組み込まれることになった。

スバルが10月10日に改良モデルを発表したインプレッサG4「2.0i-S EyeSight」

 スバルは、販売のほとんどを北米市場に依存しており、北米市場の環境で業績が大きく左右される。リーマンショック以後は、絶好調の北米市場に支えられ、まずまずの業績を維持してきたが、北米市場はもはや頭打ちである。主力市場の中国シフトが確実視されており、スバルを取り巻く環境は年々厳しくなっている。

 スバルに限らず、今後の自動車市場で生き残るためには、EV(電気自動車)と自動運転技術を確立することが必須の要件だが、スバルはEVの領域で大きな遅れをとっている。