米韓関係に異常が生じたのは、韓国大統領府の自主派が外交政策を主導しているためだという分析もある。

 自主派とは、盧武鉉政権当時、米国との同盟を重視する同盟派と対立し、自主外交を強調して南北関係を重視した外交部内の派閥だ。文正仁(ムン・ジョンイン)外交安保特使、金鉉宗・大統領府安保室第2次長、南官杓(ナム・グヮンピョ)駐日大使などが代表的な人物だ。

 その中でも金鉉宗第2次長は、文在寅大統領府の自主派の核心人物として指摘されている。

金鉉宗が事実上の外交部長官

「文化日報」は、与党関係者の言葉を引用して、「最近、大統領府内の会議で、金鉉宗2次長と康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が激しい言葉で舌戦を繰り広げたことがある」「金次長が外交部課長に直接電話して業務を指示するなど、事実上、外交部長官の役割を果たしている」と報じた。

「国民日報」は、「GSOMIA破棄の決定とその後の進行状況を見ると、(文政権の外交政策において)大統領府内で自主派の影響が強まっている」「韓日確執を機に明らかになった自主安保論が対米強硬論につながるのではないかという観測も出ている」と懸念を示した。

「朝鮮日報」も、文政権の対米・対日強硬基調は同盟派が事実上排除された状況で、自主派の思い通りに外交政策が動いているためだという外交筋の指摘を掲載。また、その自主派の司令塔は金鉉宗2次長だと分析した。同紙は、「金次長は幼年期を日本で、学生時代には米国で生活した」と説明し、「(金氏は)日本と米国についてよく知っているという自信をもとに、対日・対米強硬政策を駆使している」と分析した。

 盧武鉉政権当時、ブッシュ米行政部の関係者たちは、韓国政府内の自主派を、「外交部タリバン」「タリバン参謀」などと呼んでいたことがある。保守政権の9年間、じっと息を殺していたこのタリバンチームが文在寅大統領府で電撃的に息を吹き返し、70年間築いてきた米韓同盟を揺るがそうとしている。